2006 Fiscal Year Annual Research Report
骨盤自律神経節マッピングに基づいた神経温存術式の開発
Project/Area Number |
18591821
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永瀬 智 東北大学, 病院, 助手 (00292326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新倉 仁 東北大学, 病院・講師 (80261634)
吉永 浩介 東北大学, 病院・助手 (40343058)
村上 弦 札幌医科大学, 病院・教授 (30157747)
八重樫 伸生 東北大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00241597)
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Keywords | 広汎子宮全摘出術 / 膀胱子宮靭帯後層 / 神経節 / 神経温存術式 |
Research Abstract |
子宮癌に対する根治手術として広汎子宮全摘出術が標準的に施行される。この手術に伴う最大の術後合併症は、手術により骨盤自律神経が損傷されることに起因する排尿障害である。従来考えられてきた自律神経の損傷は主に神経線維の損傷と考えられてきた。しかし手術によって損傷される部位と神経が支配する膀胱とは解剖学的に近接しており、神経線維のみの損傷の場合には時間経過とともに線維が再生し排尿機能も回復するはずである。しかし実際には広汎子宮全摘出術を施行された多くの症例で、程度の差こそあれ排尿障害は半永久的なものとなる。このような臨床経験から、自律神経の線維のみならず神経節(ガングリオン)中の神経細胞自体の損傷が障害の程度を左右するのではないかという推測がなされる。すなわち生理学的に神経線維は再生するが、神経節は再生しないと言われていることから、神経温存を考える際に神経節の損傷を避けることが、より効率的に術後排尿障害を少なくできると考える。そこで、広汎子宮全摘出術の際、膀胱機能温存に重要と考えられている膀胱子宮靭帯後層における神経節の分布を検討した。ホルマリン固定献体6例より得られた8組織を対象とした。膀胱子宮靭帯後層には神経節は389個から732個の範囲で認められ、この領域に多数の神経節が存在することが初めて明らかになった。そのうち、48%の神経節は静脈群の内側または膣側にみられ、19.2%は静脈群間に、13%は静脈群の外側に、19.8%は背側に認めた。本来、膀胱子宮靭帯後層は膀胱静脈、膀胱枝、結合織を含み、いわば術者がその部位をすくいとることで決定される部分である。本研究によって膀胱静脈周囲の神経節の分布が認識され、この分布をもとに、手術の根治性を損なわずに神経温存の向上につながる術式の改良が期待できる。
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