2006 Fiscal Year Annual Research Report
ホルモン補充療法の大腸癌抑制作用におけるMPAシグナルの機構解明
Project/Area Number |
18591836
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
壬生 隆一 九州大学, 医学部, 教授 (20200107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 聖子 九州大学, 生体防御医学研究所, 講師 (10253527)
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Keywords | 大腸癌 / ホルモン補充療法 / 更年期医学 / 消化器学 |
Research Abstract |
(1)WHIなど米国における大規模臨床試験の結果により、抱合型エストロゲンとMPAによるホルモン補充療法を行った患者ではプラセボ群に比較し有意に大腸癌罹患率の低下を認めた。一方抱合型エストロゲンのみの補充療法を行った患者では大腸癌罹患率の低下を認めなかった。つまりホルモン補充療法に用いられるMPAには大腸癌の発生を抑制する効果を有すると思われるが、詳細な分子生物学的機序は不明である。 (2)大腸癌細胞株であるHT29、HCT116にエストラジオール(E)、プロゲステロン(P)、MPAをそれぞれ添加し、細胞数計測及びWST1アッセイにより細胞増殖能の検討を行ったところ、MPAを添加した群で増殖能の低下を認めた。 (3)フローサイトメトリーを用いた細胞周期の解析により、MPA添加によりG0/G1期分画への細胞の集積とS期分画の減少を認めた。 (4)MPAによる大腸癌細胞株増殖抑制機序をより明らかにするために、G0/G1期からS期への移行に関わるサイクリンD、サイクリンE、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)インヒビター(p21、p27等)の発現の検索をウェスタンブロットにより検討したところ、サイクリンEの発現低下及びp21の発現亢進を認めた。サイクリンE及びp27の発現量に変化は認めず、またp16の発現は認められなかった。 (5)MPA添加によるCDKとCDKインヒビターとの相互作用の変化を解明するため、免疫沈降法を用いて物理的な結合を検討したところ、MPA添加によりCDK2とp21との結合が増強する事がわかった。一方CDK2とp27、CDK4とp21、p27との間にはMPA添加による結合量の変化は認めなかった。 (6)以上の結果により、ヒト大腸においてMPAはp21の発現増加、CDK2-p21結合の増強によりCDK2のキナーゼ活性の減弱をきたし、増殖能を制御することにより大腸癌の発生を抑制する可能性が示された。
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