2006 Fiscal Year Annual Research Report
鼓索神経再建後の味覚機能と再生茸状乳頭・再生味覚神経終末の超微細構造に関する研究
Project/Area Number |
18591861
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
齋藤 武久 福井大学, 医学部, 助教授 (10139769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 健人 福井大学, 医学部附属病院, 助手 (80303379)
伊藤 哲史 福井大学, 医学部, 助手 (90334812)
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Keywords | 鼓索神経 / 再生 / 味覚 / 茸状乳頭 / 形態 |
Research Abstract |
1.鼓索神経切断後における茸状乳頭の表面形態(分布、サイズ)が、(1)舌尖部(2)鼓索神経固有領域(3)舌後部(舌咽神経領域)の3領域でどのような差があるのか、手術用顕微鏡を用いて検討した。 (2)の鼓索神経固有領域で茸状乳頭の再生がみられたのは30%、再生がみられなかったのは70%であった。この再生例中、乳頭の分布やサイズに左右差がなかったのは36%、左右差がみられたのは64%であった。つまり、鼓索神経切断例の30%では神経が再生し、舌の味覚受容器である茸状乳頭の味蕾に再生神経線維が終末しているであろうと推測された。このような鼓索神経固有領域において茸状乳頭が再生している症例では、舌全体に茸状乳頭が再生していた。(1)の舌尖部ではほとんどの症例で乳頭の残存が認められた。そこで、鼓索神経固有領域において電気味覚域値が回復しなかった症例(鼓索神経非再生例)だけに対象を絞ると、78%において茸状乳頭が残存しており、その範囲は舌正中から切断側へ1〜2cm以内がほとんどを占めていた。残りの22%では乳頭が完全に消失していた。このことから、舌尖部においては対側からの鼓索神経あるいは舌神経が交叉支配している可能性が示唆された。(3)の舌後部(舌咽神経領域)においては、63%では茸状乳頭の残存が認められ、37%では認められなかった。これは、舌後部においては鼓索神経と舌咽神経の二重支配があるためであろうと考えられた。 2.鼓索神経切断後の味覚機能がどこまで回復するかを、舌の部位別に検討した。 舌全体に茸状乳頭が再生している症例、すなわち鼓索神経が再生したと考えられる症例の電気味覚域値を対側と比較すると、神経切断側では(1)舌尖部で平均7.7dB、(2)鼓索神経固有領域で10.2dB、(3)舌後部で13.6dBであり、健側では(1)舌尖部で-4.3dB、(2)鼓索神経固有領域で2.9dB、(3)舌後部で-0.3dBであった。一方、舌尖部だけに茸状乳頭が認められる症例、すなわち鼓索神経が再生しなかった症例においては、神経切断側では(1)舌尖部で平均28.3dB、(2)鼓索神経固有領域で32.5dB、(3)舌後部で32.5dBであり、健側では(1)で-5.0dB、(2)で-3.1dB、(3)で-0.5dBであった。以上の結果から、鼓索神経が再生した症例では、対側の非切断側(健側)より域値は高いものの、味覚機能は回復していると考えられた。一方、鼓索神経が再生しなかった症例では、味覚機能は消失したままであろうと考えられた。
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