2006 Fiscal Year Annual Research Report
上気道における好酸球性炎症の発症機序の解明とその制御に関する研究
Project/Area Number |
18591887
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
飯野 ゆき子 自治医科大学, 医学部, 教授 (30108534)
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Keywords | 好酸球 / ケモカイン / サイトカイン / 真菌 / 内耳障害 |
Research Abstract |
非常に粘稠な黄色の貯留液を有し、従来の治療に抵抗を示す難治性の慢性副鼻腔炎や滲出性あるいは慢性中耳炎の報告が多数なされている。これらの症例では気管支喘息を合併することが多いが必ずしもI型アレルギーが証明されない.しかしその副鼻腔や中耳の粘膜および貯留液には多数の好酸球の浸潤がみられる。これらは通常経験する副鼻腔炎や中耳炎の病態と非常に異なることから、好酸球性副鼻腔炎と好酸球性中耳炎と呼ばれている。これらはTh2優位な個体において,中耳あるいは副鼻腔にある腫の異物が侵入することが契機となり,好酸球遊走因子が産生され,好酸球が局所に集積し発症した病態と考える.私どもは、この仮定を証明するために、副鼻腔や中耳の中耳貯留液あるいは粘膜中に、各々の組織への好酸球誘導に関係すると思われるサイトカインやケモカインを蛋白レベル及びmRNAレベルで検出し、これらが局所における好酸球炎症に密接に関係していることを示した。さらに免疫染色にてecalectin, RANTES, eotaxinは副鼻腔,あるいは中耳粘膜では線維芽細胞,血管内皮細胞,マクロファージに発現していることを証明した.また好酸球性中耳炎は耳管開放症、あるいは閉鎖不全症のものに多く発症する事も証明した。 しかし上気道局所においてどのような異物がTh2細胞に働き,さらにどのような伝達物質によってこれらの好酸球誘導因子が発現するかは不明のままである.近年,アルテルナリアやペニシリウムがヒト好酸球を刺激し,Ca依存性に好酸球の脱穎粒を引き起こすことが報告された。よってPCRを用い,好酸球性中耳炎の貯留液からPCRにて真菌のDNAを分離することを試みたが検出は出来なかった。しかしこれらの中耳貯留液中から各種真菌にたいする抗原特異的IgEが対象例より高頻度に検出され、やはり真菌等の異物の侵入が好酸球性炎症の引き金になっていると思われた。さらにその詳細な機序については検討中である。
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