2006 Fiscal Year Annual Research Report
核内転写因子による、敗血症性ショックの治療法の検討と開発
Project/Area Number |
18591979
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
磯部 光章 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80176263)
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Keywords | 敗血症性ショック / 核内転写因子 / PPAR / ピオグリタゾン |
Research Abstract |
最初にコントロール実験として、ワイルドタイプのマウスに対して核内転写因子Peroxisome Proliferator Activated Receptor γのリガンドであるピオグリタゾンをあらかじめ投与し、盲腸結紮穿刺にて敗血症性ショックを誘発した群と非治療群を比較検討した。非治療群は誘発7日後までに85%が死亡したが、前投与群は60%の死亡にとどまった。ピオグリタゾンの予後改善効果が判明したため、敗血症性ショック誘発6時間後の、血圧下降後に投与を開始したが、こちらも死亡率65%と有意な改善を認めた。これら各群のマウスにおいて、肺、肝の炎症性細胞の浸潤を免疫組織染色を用いて検討したが、有意にピオグリタゾン投与群で抑制されており、また血中炎症性サイトカイン、ケモカインともに同様の結果であった。また、肺、肝のミエロペルオキシダーゼ活性も投与群で低下していた。これらの結果がピオグリタゾンの持つ炎症抑制効果によることは今までの研究報告でも明かとなっており、臓器への炎症性細胞の浸潤抑制の機序を検討するため、培養単核球系細胞THP-1の血管内皮への接着実験を行った。培養血管内皮細胞に炎症性サイトカインTNF-αを添加した後、血流と同様に培養液を層流状に循環させつつTHP-1細胞を添加し、ピオグリタゾン処理群と非処理群において内皮細胞への接着を比較検討した。この実験でもピオグリタゾン投与群において有意な抑制が認められ、ピオグリタゾンは炎症の抑制とともに、各臓器への炎症性細胞の浸潤抑制も介し、予後を改善していることが明らかとなった。さらに、脂質のプロファイルが敗血性ショックの予後を規定しているという論文が発表され、大きな反響を呼んでいるため、我々が所有しているApoEノックアウトマウスに敗血症を誘発した。非治療群では3日後に100%死亡することが判明したが、ピオグリタゾン投与群は生存するものが存在し、敗血症性ショックの予後不良群における治療効果も期待できると考え、さらなる追加実験を行っている段階である。
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