2007 Fiscal Year Annual Research Report
口腔領域におけるウイルス感染と細菌感染のクロストーク
Project/Area Number |
18591994
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安田 元昭 Hokkaido University, 大学院・歯学研究科, 准教授 (90239765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 健一郎 北海道大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (50145265)
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Keywords | アデノウイルス / 自然免疫 / 転写因子 |
Research Abstract |
平成19年度の実験によりヒトアデノウイルスの自然免疫機構による認識においてTLR2が必須であることが確認された。TLR2を発現させた293細胞は5型アデノウイルス(dl309)およびE1領域をβ-ガラクトシダーゼに置換したリコンビナントウイルス(Ad-βgal)を効率よく認識し、細胞内でNF-κBの活性化が認められた。しかしながら、Ad-βgalでは感染16時間後にも顕著なNF-κBの活性化が認められたが、dl309ではアデノウイルス自身の感染が誘導するNF-κBの活性化は著しく抑制されていた。われわれはアデノウイルスE1領域にNF-κB抑制活性があると考え各初期タンパク質の導入を行った。E1遺伝子のうちE1Aはこのルシフェラーゼ活性をほぼ完全に抑制したが、他の初期遺伝子E1B55Kにはこのような効果は認められなかった。E1Aの削除ミュータントを用いた解析により、E1AのCR3 domainはこの抑制活性には不要であること、またN末端25アミノ酸あるいはRbとの結合に必須であるCR1、CR2がこの抑制活性にとって重要であることが明らかとなった。この結果は、E1Aがp300との結合のみでなく、RBとの結合により宿主細胞のTLR2下流のシグナル伝達を阻害している可能性を示唆するものである。さらに我々は、E1AとRbの結合によって遊離するE2Fタンパク質がNF-κBと直接結合することを見出した。 TLR2は主に細菌感染を認識する自然免疫受容体であり、ヒトアデノウイルスによるTLR2依存的な宿主自然免疫応答の攪乱は宿主細胞の細菌感染認識をも抑制し、時に重篤な細菌感染症の形成に関与することが予想される。
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