2007 Fiscal Year Annual Research Report
FGF23等の低リン血症因子を標的とした歯牙形成異常の分子治療に関する基礎的研究
Project/Area Number |
18592001
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉子 裕二 Hiroshima University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 准教授 (20263709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
汪 華 広島大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50363081)
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Keywords | FGF23 / Pit1 / 骨形成 / 歯の形成 / くる病・骨軟化症 / 低リン血症 |
Research Abstract |
リン酸代謝は硬組織形成を含む生命活動全般を維持するために厳密に調節されている。活性型ビタミンD(1,25D)と副甲状腺ホルモン(PTH)はリン酸代謝に重要であるが、最近、腫瘍性骨軟化症における網羅的解析等により、新たなリン酸代謝調節因子が多数報告された。一方、これらとは別に、生体におけるリン酸輸送のキー分子であるナトリウム依存性リン酸トランスポーター(NPT)が骨や歯といった硬組織形成にどのように関与するか注目されてきた。そこで、本件と関連し、本申請者らはこれまでに骨における主要なNPTがタイプIIIに属するPit1であることを明らかにした。 今回は、マウスPit1遺伝子を導入したトランスジェニックラットの歯牙硬組織の組織学的観察を行い、エナメル質、象牙質形成の異常所見を明らかにした。これにより、Pit1を導入またはノックダウンした培養骨芽細胞(セメント芽細胞等の代替、取り扱いが簡便なため)に様々なリン酸代謝調節因子を導入したが、Pit1による骨形成障害を改善することはできなかった。一方、NPTの選択的阻害剤を用い、動物実験レベルでの骨芽細胞のPit1と骨形成、とくに基質石灰化の関連性を明らかにした。 また、リン酸代謝調節因子のうち、FGF23はセメント芽細胞や象牙芽細胞にも局在することから、FGF23の組換えアデノウイルスを作製し、培養骨芽細胞または骨器官培養に導入し、その生物活性を解析した。その結果、FGF23の過剰発現は骨芽細胞のFGF受容体FGFR1を介し、細胞分化、基質石灰化をそれぞれ独立して抑制することが明らかとなった。 以上より、(1)リン酸代謝調節因子の1つであるFGF23は骨形成に対し、負に作用すること、(2)骨芽細胞のPit1の機能は血中リン酸レベル非依存的に骨形成に直接関与することが明らかとなった。これらの結果は硬組織形成とリン酸との関連性を強く示すものであり、これらの成果を発展的に進めることで、リン酸代謝の新機軸を確立するとともに、これまでにない歯・骨障害の治療標的を提供するものと思われる。
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