Research Abstract |
マウス胎仔の頭頚部領域にHsp25の発現を免疫組織化学的に検索し,口腔粘膜を構成する外胚葉の分化との関係を,口蓋の発生と癒合,歯胚発生,メッケル軟骨,歯肉で明らかにした。特に口蓋発生では,口蓋粘膜同士が癒合する直前に,表層上皮でHsp25の発現が消失すること,まずその消失部分で近接,癒合が開始すること,結合織内に取り残された上皮索の一部に強い発現が再発すること,また上皮索の消失より早く,同部のHsp25の発現が再び消失すること,が明らかになった。また,Hsp25の基本的な機能と考えられているアポトーシスの抑制との関連について,TUNNEL法で調べると,癒合開始時のHsp25の発現消失部で,多数のアポトーシス上皮細胞が認められた。 ラット成獣の口腔粘膜のおいて,付着上皮,歯肉,歯槽粘膜,舌粘膜では,その上皮脚の発達程度に応じて異なったHsp25の発現・局在を示すこと,また付着歯肉ではその増殖部でHsp25の発現が認められないことが明らかになった。 ラット成獣の顎下腺導管を結紮して後に解除し,腺組織の再生におけるHsp25の発現と,増殖,分化,幹細胞の各マーカーとの発現を比べたところ,Hsp25は増殖活性が低下して分化マーカーの発現が上昇する谷間に一時的に発現すること,幹細胞マーカーはHsp25よりも早い時期に発現することが分かった(現在追試中) 以上の結果から,口蓋発生においては粘膜上皮に発現するHsp25は,アポトーシスを抑制し,アポトーシスが必要な癒合の開始直前でHsp25の発現が低下することによって,アポトーシスを誘導して正常口蓋突起の癒合が起こることが示唆された。さらに唾液腺再生や口腔粘膜の所見では,Hsp25は上皮細胞の増殖抑制に働いて,増殖活性が低下して分化に移行する時期に発現することが強く示唆された。また,幹細胞との関係では,一般に増殖能を有する幹細胞より,より分化傾向を示した状態の細胞にHsp25が発現することが示唆された。
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