2006 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病原菌産生短鎖脂肪酸による病原性バイオフィルム形成と細菌侵入性に及ぼす影響
Project/Area Number |
18592011
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
落合 邦康 日本大学, 歯学部, 教授 (50095444)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉福 英信 国立感染症研究所, 細菌第一部, 技官 (20250186)
田中 一 日本大学, 歯学部, 講師 (40188321)
黒田 亘一郎 日本大学, 歯学部, 助手 (70318450)
菊池 邦好 日本大学, 歯学部, 講師 (10169823)
|
Keywords | バイオフィルム / 短鎖脂肪酸 / 歯周病原細菌 / 酪酸 / 組織侵入 / 組織為害作用 / アポトーシス |
Research Abstract |
歯周病の原因となる歯肉溝内病原性バイオフィルムは、歯肉溝内に産生される未知の物質の増加により正常口腔歯垢から病原性歯垢に変化すると考えられる。しかし、この細菌叢の遷移を誘導する因子がいかなる物質か、どのように行われるか報告はない。本研究においては、この細菌の遷移を誘導する物質の解明と、遷移を阻害することによる感染予防を目的としている。 一連の研究の初段階として歯垢内偏性嫌気性菌が産生する短鎖脂肪酸(SCFA)の口腔バイオフィルム構成細菌に及ぼす影響を検討した。SCFA、特に酪酸は、histone deacetylase阻害剤として核酸に種々の影響を持つが、濃度により細胞の核酸合成を促進、または、阻害といった二相性の作用を持つことが知られている。しかし、微生物に対する作用の検討はなされていない。そこで、SCFAの種類と濃度が微生物の発育および酵素産生性に及ぼす影響を検討した。その結果、正常歯垢構成菌であるレンサ球菌に対するSCFAの作用は、MitisグループのS.mitisおよびS.gordoniにおいて1.25mMから顕著な発育抑制が見られた。一方、actinomyces属菌では、顕著な発育促進が見られ、ついでS.mutans、S.sobrinusなどのMutansグループの発育促進が見られた。これらの結果から、SCFAの歯垢内蓄積は、口腔環境の維持に重要なレンサ球菌数を減少させる一方で、歯垢蓄積に大きな影響を持つactinomyces属菌を増加させている。また、Mutansグループを増加さえることにより、歯垢を強固に歯面に付着させ、嫌気性細菌の発育に最適な環境を作り出している可能性がある。また、SCFAを発育因子とすることが知られている口腔スピロヘータにおいても、従来のように複数のSCFAが必要なのではなく、高濃度のイソ酪酸単独で発育が促進され、本菌の重要な病原因子であるタンパク分解酵素(dentilisin)の産生も増加することが判明した。このように、歯垢の蓄積とともに増加する偏性嫌気性の代謝産物、SCFAは病原性歯垢への遷移を促進する可能性が強く示唆された。
|
Research Products
(5 results)