2007 Fiscal Year Annual Research Report
IGA腎症と多量体免疫グロブリンレセプターの点突然変異に関する研究
Project/Area Number |
18592071
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
浅野 正岳 Nihon University, 歯学部, 講師 (10231896)
|
Keywords | 多量体免疫グロブリンレセプター / IgA腎症 / 点突然変異 |
Research Abstract |
IgA腎症は腎臓の糸球体に免疫複合体が沈着し、腎機能の低下を招く疾患である。IgA腎症患者の遺伝子DNAの解析の結果、多量体免疫グロブリンレセプター(pIgR)分子の580番アミノ酸であるアラニン残基がバリン残基に置換されている点突然変異との相関が明らかとなった。そこで本研究では、この点突然変異がpIgRの機能に如何なる影響を及ぼすのかということを解明するために生化学的な実験を行った。 はじめに遺伝子工学的手法を用いてヒトpIgR遺伝子の580番目のアラニン残基のバリン残基への変換を行った。作製した遺伝子は哺乳動物用発現ベクターに組み込み、培養細胞に強制的に変異型pIgRおよび正常型pIgRを発現させる実験系を確立した。この系を用いて変異型pIgRと正常型pIgRの生化学的性質の違いを比較検討した。pIgRは一般的に細胞膜上で酵素的に切断されて培養上清中にその細胞外領域のみが分泌されるが、両者における分泌の違いを比較したところ、まったく違いは認められなかった。またpIgRの分泌が蛋白質リン酸化酵素の活性化により促進されることが解っており、酵素の活性化後の違いについても比較したが、違いは見られなかった。そこで、pIgRの細胞外切断部位に当たると考えられている606番目および607番目のグルタミン酸のどちらか一方または両者をアラニン残基に変えた変異型を作製し、pIgRの細胞外領域の分泌の違いを比較した。ところがこの変異体においても正常型のpIgRとの間に差は認められなかった。以上の結果は、従来報告されているpIgRの酵素的切断部位に関する定説に疑問を抱かざるを得ないものであり、今後同様の方法を用いた更なる研究の必要性を示唆するものである。
|