2007 Fiscal Year Annual Research Report
細胞核内MALT1のNF-kB転写活性抑制による口腔扁平上皮癌進展の解析
Project/Area Number |
18592073
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
今井 一志 The Nippon Dental University, 生命歯学部, 准教授 (10328859)
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Keywords | 口腔癌 / 歯学 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 実験腫瘍学 |
Research Abstract |
顎口腔領域で最も発生頻度の高い悪性腫瘍である扁平上皮癌の進展が、どのような分子機構に基づいているかは未だに明らかになっていない。我々は口腔扁平上皮癌細胞で高頻度に発現が停止するmucosa-associated lymphoidtissue 1(MALT1)について、その発現停止機構と癌細胞表現形へおよぼす影響について検討した。 多くの癌抑制遺伝子はプロモーター領域の広範囲なメチル化によって、エピジェネティックに遺伝子発現が抑制される。そこで、口腔癌細胞株と実際の癌組織切片から抽出した癌細胞ゲノムDNAを試料として、MALT1遺伝子プロモーターのメチル化をbisulfite-modified genomic sequence法およびmethylation-specific PCR法で検討した。その結果MALT1遺伝子は転写開始点から254bp下流のシトシンのみがメチル化されることが判明した。このメチル化がMALT1遺伝子転写抑制の原因であることは、脱メチル化処理した癌細胞株でMALT1 mRNAの発現レベルの上昇によって確認できた。MALT1がNF-kBの転写活性を抑制することで口腔癌細胞の悪性形質を低下させることは、これまでの研究で明らかにしてきた。すなわち、MALT1は口腔癌細胞の造腫瘍性、増殖能、浸潤能を著しく抑制する。これら以外にも癌細胞悪性形質を特徴づけるものとして遊走能があげられる。そこで、野生型MALT1あるいは機能欠失型MALT1遺伝子を恒常的に発現する口腔癌細胞株を樹立し、wound healing assayで遊走能の変化を解析した。機能欠失型MALT1発現細胞株では遊走能が著しく亢進し、24時間後には傷創部は98%以上回復した。それに対し、野生型MALT1発現細胞株はほとんど遊走せず、約10%の回復率に留まった。しかし、MALT1に対するsiRNAを導入した場合は回復率が28%以上に上昇した。以上の結果から、MALT1は口腔癌細胞の悪性形質を多元的に抑制し、癌細胞はMALT1の発現を停止することにより進展していくと考えられる。現在、MALT1が癌細胞の細胞核内で結合するタンパク質を質量分析系で解析中であり、MALT1の癌細胞悪性形質抑制メカニズムを分子レベで検討している。
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Research Products
(5 results)