Research Abstract |
象牙質・歯髄複合体の修復再生過程における歯髄組織幹細胞/前駆細胞の動態と象牙芽細胞の分化機構の解明を目的として,直接覆髄後の修復象牙質形成過程におけるこれらの細胞の動態について検索するとともに,歯牙再植ならびに歯髄組織移植後の硬組織形成過程における形成細胞の由来について検討した。 1.Mineral Trioxide Aggregate (MTA)直接覆髄後のヒト歯髄の反応 2週後,MTA-歯髄境界部に一層の骨シアロタンパク(BSP)陽性層が認められ,これに沿ってnestin陽性細胞が観察された。4週後,BSP陽性層の下にオステオポンチン(OPN)陽性の線維性基質が形成され,歯髄側にnestin陽性細胞の配列が観察された。また細胞増殖・分化マーカー(Ki-67, Osterix)の局在性の変化から,露髄部直下で増殖・遊走した細胞が象牙芽細胞様細胞に分化することにより被蓋硬組織形成が開始されること,さらにこれらの過程に非コラーゲン性タンパクが関連すること示唆された。 2.ラット歯牙再植後の歯髄腔内硬組織形成 5日後,象牙芽細胞は変性し,14日後になると歯髄腔に象牙質様,骨様組織の形成が観察された。Green fluorescent protein (GFP)発現ラット臼歯を野生型ラットの抜歯窩に移植すると,GFP陽性細胞が骨様組織表層と象牙質様組織全体に観察されることから,歯髄細胞がこれらの硬組織の形成に関与することが示された。 3.ラット歯髄皮下移植後の硬組織形成 7日後,歯髄組織周辺部に硬組織形成が開始され,14日後になると内部に拡大して観察された。硬組織はオステオカルシン,OPN, BSP陽性を示したが,象牙質シアロタンパク陰性であり,骨様組織であることが示唆された。GFP発現ラット歯髄の野生型ラットへの移植実験では,硬組織形成細胞が移植体由来であることを示していた。
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