2007 Fiscal Year Annual Research Report
歯の喪失はアルツハイマー型認知症の危険因子か?マイクロダイアリシス法による検討
Project/Area Number |
18592160
|
Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
井上 宏 Osaka Dental University, 歯学部, 教授 (30067053)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 泰司 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (20205800)
前田 照太 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (10103110)
|
Keywords | 歯学 / 神経科学 / 脳・神経 / 痴呆 |
Research Abstract |
【目的】臼歯喪失が学習記憶にもたらす影響を明らかにすることを目的として,完全自由行動下で実験可能なテレメトリーグルタミン酸バイオセンサーを用い,受動的回避実験時の海馬グルタミン酸放出量測定を行った. 【方法】16匹のSD系雄性ラットを実験動物として用いた.5週齢時に全身麻酔下で上顎臼歯を全て抜去した抜歯群,同量の麻酔のみを施し無処置とした対照群の2群に分けた.6週齢ですべてのラット海馬CA1領域にガイドカニューレ植入を行い,翌7週齢で受動的回避実験時の海馬グルタミン酸変動を測定した.受動的回避実験は獲得試行と保持試行の2試行とした.まず獲得試行としてラットを明室に入れ,そこから暗室に入るまでの反応潜時を測定した.暗室に入った直後に床グリッドから電撃刺激を与えた.24時間後の保持試行でも反応潜時を測定し,両試行の潜時を比較した.なお海馬グルタミン酸放出量の測定にはテレメトリーバイオセンサーシステムを用い,各試行開始前後の計70分間のグルタミン酸放出量を比較した. 【結果と考察】獲得試行での反応潜時には有意差は見られなかったが,保持試行では獲得試行に対し両群共に反応潜時が延長し,刺激回避行動がみられたことから,学習記憶の効果が伺えた.しかし,抜歯群の反応潜時が対照群に対して有意に短縮したことから,臼歯喪失が学習記憶過程に障害をもたらすことが明らかとなった.また獲得試行開始後の抜歯群のグルタミン酸放出量が対照群に対して低値であったことは,抜歯群のシナプス活性化が誘導されにくく記憶されるべき情報流入の低下が推察される.保持試行でグルタミン酸放出量に有意差はなかったことは,すでに獲得した学習記憶を保持・再生する過程で海馬を一定に活性化させることが記憶を想起するために必要であると考えることができる. 以上のことから,臼歯喪失は学習記憶の障害を誘発する一要因になりうることが明らかとなった.
|
Research Products
(3 results)