2007 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸ペースメーカーニューロンによる舌運動脳幹内制御機構の解析
Project/Area Number |
18592175
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小泉 英彦 Osaka University, 歯学部附属病院, 講師 (10324790)
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Keywords | 脳・神経 / 神経生理 / 呼吸 / パッチクランプ |
Research Abstract |
本研究は、呼吸に関連した舌運動に着目し、脳幹内における舌運動制御機構の解明を試みたものである。本年度はまず、新生児あるいは成熟ラットの培養脳幹を用いて、呼吸性舌運動発現に関わるイオンチャネル機構、とくに特殊なNa^+チャネル(persistentNa^+チャネル:NaP.チャネル)の役割について解析を行った。その結果、安静呼吸時には、NaPチャネルは補助的な役割を担っているのみで、そのリズム形成にはCl^-チャネルを介した抑制性神経伝達機構(glycineやGABAレセプター)が主要な役割を担っていることが明らかとなった。一方、低酸素状態においては、呼吸リズム形成にNaPチャネルが必須であることが明らかとなった。次いで、これまでに実験的に得たデータを用いて、コンピュータ・シミュレーションにより、呼吸性舌運動発現に関わる神経ネットワークの解析を米国国立衛生研究所(NIH)のSmith博士との共同研究にて行った。シミュレーションシステム(Hodgkin-Huxley style)上で作成した呼吸ネットワークにおいて、呼吸ペースメーカーニューロン、舌下神経(前)運動ニューロンのNaPチャネルコンダクタンスを様々に変化させた際の呼吸性舌運動の変化を解析した。その結果、呼吸ペースメーカーニューロンのリズム性神経放電の発現にはNaPチャネルが必須であり、そのチャネルコンダクタンス変化が舌下神経運動ニューロンの呼吸性リズム性活動の放電頻度や放電振幅を調節していることが明らかとなった。さらには、呼吸性リズム性活動の左右同期や放電停止には、NaPチャネルが関わっていることが示唆された。本研究結果は、睡眠時無呼吸などの様々な病的呼吸に関わる脳幹内制御機構の解明にも重要な示唆を与えるものと考えられる。
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