Research Abstract |
前年度は,腹腔内へ鉄ニトリロ三酢酸(Fe-NTA)を投与したが,末梢組織への影響を排除するため,今年度は側脳室へ微量のFe-NTAを持続投与した。マウス(ddy)の脳室内へ,浸透圧ポンプと脳室内投与キットを用いて,持続的にFe-NTA溶解液(Feとして0.1 mg/ml,0.25ml/hr)を投与し,それによる脳組織の変化を調べた。コントロールとして,生理食塩水を同様に脳室内へ持続投与した。2週間の持続投与を行い,視床下部,大脳皮質,線状体,海馬のヘムオキシゲナーゼ(HO)-1 mRNA, IL-6 mRNAおよびスーパーオキシドディスムーターゼー2(SOD2) mRNAをreal-time PCRにより測定した。その結果,Fe-NTA投与により,HO-1 mRNAとIL-6 mRNAのレベルは上昇したが,SOD2 mRNAでは,ほとんど変化がなかった。4週間持続投与した後には,組織染色としてHE,鉄染色,TUNEL染色を行った。定量的測定として,ドットブロットによるノネナール(4-HNE)の定量,real-time PCRによるHO-1,IL-6,IL-1b,TNFa,SOD1,SOD2,SOD3,Bcl2,Bad,FasLのRNA量の定量を行った。その結果,HEではFe-NTA投与側の海馬が著明に破壊され,炎症性組織に置き換わっていることが示された。鉄は炎症性組織と正常組織の間に沈着し,その局在に一致して神経細胞にアポトーシスが検出された。4-HNEの他,HO-1,IL-6,IL-1b,TNFa mRNAのレベルが視床下部と海馬で上昇していた。コントロールでは,上記の変化を認めなかった。以上のことから,Fe-NTAの脳室内持続投与により,著しい酸化障害が惹起され,炎症と酸化反応が強く誘導されていた。また,特に海馬のダメージが大きくなっていたことから,海馬はFe-NTAによる酸化障害を受けやすい可能性があると思われた。
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