Research Abstract |
咀囑・嚥下運動中に鼻呼吸と口呼吸の協調運動が極めて重要な要素であることがわかり,幼小児期での鼻呼吸から口呼吸への移行が早すぎる場合,成人期・老年期においても口呼吸と鼻呼吸の加齢による変化と相まって協調能力が著しく減少し,これが上気道に関連する諸病態(摂食嚥下障害,睡眠時無呼吸症候群)を悪化させる危険性があるとも考えられている. そこで,本研究では,鼻呼吸と口呼吸の相互調節機能の減少が,上気道が関与する各生理機能に影響を与えるという仮説のもとで,鼻腔内および軟口蓋・口蓋垂部の圧・化学受容器などの調節因子が鼻呼吸と口呼吸の協調に影響を与えるかを検討した. 初年度は,上気道の開通性の維持,嚥下機能に極めて重要な役割を果たしている,オトガイ舌筋の反応性について,ミダゾラムによる意識下鎮静法中の咽頭部の閉塞圧の変化を指標にして検討した.その結果,吸気時の一過性の呼吸負荷と軽度の炭酸ガス蓄積が,オトガイ舌筋の筋活動性を亢進し,上気道の開通性を改善し,嚥下機能も増強することが分かった.また,プロポフォールの意識下鎮静法中の,オトガイ舌筋の筋活動性の亢進による咽頭部の閉塞圧の変化に,性別の差が存在する可能性も分かった.これの結果は,現在,J.Appl.Physiol.およびAnesthesiologyに投稿予定である.また,これまでの結果から,次年度では,(1)鼻腔から,咽頭部のどの部位が,上気道開通性,嚥下機能に最も影響を与えやすいか,(2)性別の差があるとすれば,性ホルモンなどの因子が関与しているか,などの点について,発展的な研究を行う予定である.
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