Research Abstract |
【背景と目的】C型肝炎ウイルス(HCV)感染は,慢性肝障害や肝細胞癌の発生に密接に関与する一方で様々な肝疾患以外の重篤な疾患の発症にも関与している(いわゆる肝外病変)。皮膚や粘膜に発現する慢性の炎症性角化病変である扁平苔癬も,HCVの肝外病変の一つである。近年,C型慢性肝炎では,他の肝疾患患者に比べてインスリン抵抗性が強く,HCV持続感染者が糖尿病を発症するリスクが高いことを報告した(3.6倍)。本年度の研究では,C型慢性肝疾患患者における肝外病変発現率とインスリン抵抗性との関連を検討することを目的とした。【対象】1988年4月〜2005年8月までに久留米大学消化器病センターを初めて受診した慢性肝疾患患者105,984名のうち2006年4月までに定期通院している生存患者で,肝外病変の精査が行えた87名。【方法】1.扁平苔癬の検索,2.肝疾患の検索(問診聴取後,血液生化学検査並びに肝炎ウイルスマーカー検索後に肝疾患の病態把握を実施),3.糖尿病の検索(食事や運動量の問診聴取後,身長・体重測定,BMI,空腹時血糖,HbAlc,血清インスリン値,Homeostasis modelassessment(HOMA)-IR算出),4.その他の肝外病変の検索(シェーグレン症候群,甲状腺機能異常,関節リウマチ,肝外悪性腫瘍の有無)。【結果】肝外病変の有病率は以下の通りである:扁平苔癬19.5%,糖尿病21.8%,高血圧症28.8%,甲状腺機能異常20.7%,肝外悪性腫瘍9.2%、また,対象患者87名のインスリン値は23.3±42.0μU/L,HOMA-IR値は7.1±18.8と高値を示した。扁平苔癬を有した17名の病変発現部位は,口腔粘膜(頬粘膜)が最も多く,膣粘膜,咽頭粘膜に及んでいた。扁平苔癬を合併するHCV感染者と扁平苔癬を合併しないHCV感染者においてインスリン抵抗性に差異が認められるのかどうかを次年度検討する。
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