Research Abstract |
内臓脂肪蓄積を基盤とし,高血圧症,耐糖能異常,脂質代謝異常などが合併したメタボリックシンドロームは,心血管病易発症状態として捉えられ注目されている.一方,歯周病はさまざまな全身疾患と関連を有し,歯周病が心血管疾患や糖尿病の病態に影響を与えることが報告されている. われわれは,本研究課題に対して愛知学院大学歯学部倫理委員会の承認を得た上で,愛知学院大学歯学部附属病院歯周病科通院中で本研究に同意の得られた患者におけるメタボリックシンドロームと歯周病の関連について,血管機能およびサイトカインを含めて検討した.口腔内所見,う蝕,修復物・補綴物の状態,さらに,歯周病所見は歯周病専門医により診断され,歯周組織の診査は,15mmの歯周プローブ(UNC15,Hu-Friedy, USA)を使用し,第3大臼歯を除く全歯を6点法でプロービングデプス(PD),アタッチメントレベル(AL),プロービング時の歯肉出血(BOP)を測定し,評価した.また,デンタルX線写真から,歯槽骨吸収状態を,Scheiの方法に準じて,第3大臼歯を除く全歯の近遠心の歯槽骨吸収率を計測し,その平均や,20%以上および50%以上の歯槽骨吸収を示す比率をそれぞれ計算した.なお,メタボリックシンドロームの診断は,平成17年日本内科学会等内科系8学会合同で発表された診断基準を用いた. これまでの解析において,歯周病患者におけるメタボリックシンドロームの有病率は約40%と高い傾向が認められた.さらに,メタボリックシンドローム保有群では現在歯数が有意に少なく,逆にBOP陽性率,プラークスコアが高い傾向を認めた.こうした結果は,歯周病とメタボリックシンドロームが密接に関連することを示唆している.今後,さらに人数を増やして解析を行うとともに,歯周病治療がメタボリックシンドロームに及ぼす影響について前向き研究を行う計画である.
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