2007 Fiscal Year Annual Research Report
筋萎縮性側索硬化症の家族介護者のエンパワメントを促進する支援プログラムの開発
Project/Area Number |
18592400
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
村岡 宏子 Toho University, 医学部, 教授 (60258978)
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 家族介護者 / プログラム開発 / bereavement care / grief care / カウンセリング / エンパワメント / 遺族 |
Research Abstract |
2007年の厚生労働省の報告では、わが国における筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、7,695人である。この病気は全身の随意筋が萎縮し、運動障害、構音障害、嚥下障害、さらには呼吸障害を起こし、徐々に身体の自由を奪われていく。介護者は、数ミリ単位での体位変換を頻繁に行わなければならず、患者との意思疎通が困難になるため特殊なコミュニケーションの工夫も必要になる。その上、患者が人工呼吸器を装着すれば、吸引はもとより、胃瘻や経鼻カテーテルからの経管栄養、尿留置カテーテルの挿入などの専門的な知識と技術が求められる。ALSという病気が、ケアする家族介護者へ心理的な波及をもたらす点についてはすでに報告されているものの、実際どれほどの影響をもつのか、影響を最小にするためにはどのようなプログラムを準備する必要があるのかを申請者は検討してきた。 平成19年度は、過去の遺族へのインタビューから見えた、記憶の断片化という現象について日本保健科学会誌The Journal of Academy of Health Sciencesへ報告した。記憶の断片化現象とは、介護者が患者との死別後、介護中に起こった記憶を自己のなかに統合できず苦悩するという特徴があった。彼らは、記憶の忘却も再生のされ方も不安定で感覚的、情緒的、無意識的な出来事の表れを体験していたのである。特に<虫食いの時間軸>で、介護者は介護における経過の一部が虫食いのように空白であり、出来事を時間軸にしたがってうまく配列できなかった。このような結果から、慢性的ストレスを抱えた遺族に対して、死別後カウンセリングをする機会の重要性が示唆された。また、現在進行形で介護している家族のエンパワメントを促進するプログラム開発が急務であり、その際、患者と家族の関係性にも注目し、経過を継続的に見守り支援していくことが期待される。
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Research Products
(3 results)