2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナラティブアプローチによるうつ病者の自殺予防に関する研究
Project/Area Number |
18592414
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
長谷川 雅美 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (50293808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 順二 金沢大学, 医学部附属病院, 教授 (20161846)
細見 博志 金沢大学, 医学系研究科, 教授 (50165560)
河村 一海 金沢大学, 医学系研究科, 講師 (50251963)
谷本 千恵 石川県立看護大学, 看護学部, 助手 (10336604)
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Keywords | うつ病者 / ナラティブアプローチ / 認知療法 / 思考の歪み / 治療的なかかわり |
Research Abstract |
本年度の研究目的は、'服薬治療を受けている在宅のうつ病者を対象として、ナラティプアプローチを実施し、対象の「語り」に潜むうつ状態に至る認知的問題を明らかにすることである。予約者の中で、本研究の意図を理解し、研究協力の同意を得た対象者4名に認知療法を導入した会話の進め方を説明した。実施場所は総合病院外来の静かな1室で、自由に不安感や焦燥感、面談までの出来事を語ってもらい、それを録音(許可を得た場合)、託述した。対象の推論の誤り(認知の歪み)を10項目(福井至作成)に照らし合わせ、トリプルカラム表を用いて対象にも確認しつつナラティプアプローチを実施した。できるだけ当事者に気付きができるよう、受容的に傾聴し、確認、繰り返し、発話促進などのコミュニケーション技術を駆使して対象者と共同した双方向の治療的なかかわりを試みた。その結果、6回〜8回/1人のセッションで認知の歪みを自覚することができるようになった。ただし、その思考基盤はまだまだ脆弱で、身体症状の出現やパニック状態に陥るなど葛藤を繰り返しながら徐々に認知的問題を自覚していくというプロセスであった。今回の結果の分析から、中カテゴリとして、・思考力の低下の認識・刺激に対する逃避と不安・思考の混乱・身体的違和感と不安・罪悪感、不全感・家族役割に対する自責感・家族への虚勢が抽出され、大カテゴリとして、「集中・判断できない不安」、「不安定な感情の自覚」、「家族への自責感」が抽出された。またナラティプアプローチによる対象者への効果として以下の点が明らかとなった。 ・感情表出の機会と保障を与えた ・語りからの自己洞察と行動化につなげられた ・思考の整理と客観的判断を学習できた ・くりかえしの自動思考(自己の思考パターン)の認知ができた ・違う思考(合理的思考)を考える機会となった ・危機状況でのセルフケア(服薬、受診、相談、対処)に繋がった 今年度の研究成果を、次年度に向けてさらに対象を増やしながら継続して繋げるとともに、多くのうつ病者の心の奥に潜む自殺念慮への改善に向けたサポートを実践していきたい。
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