2007 Fiscal Year Annual Research Report
生後発達に伴う脊髄痛覚伝達系成熟過程のin vivoパッチクランプ解析
Project/Area Number |
18613009
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古江 秀昌 Kyushu University, 大学院・医学研究院, 助教 (20304884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 恵 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (10140641)
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Keywords | シナプス / アロディニア / 神経生理 / 神経回路 / パッチクランプ / in vivo / 生後発達 / 感覚 |
Research Abstract |
発達に伴う脊髄への一次求心性線維の投射に重要な役割を果たす分子を欠損したマウスを用い、行動の異常を正常マウスと比較した。次に、電気生理学的手法を用いて一次求心性線維を介した脊髄後角細胞への興奮性シナプス入力の、詳細な機能解析を行った。 侵害性熱刺激に対する逃避行動の潜時を比較すると、正常、欠損マウスにおいて有意な差はみられなかった。一方、機械的侵害刺激に対する逃避行動を観察すると、その閾値が欠損マウスで有意に減少した。脊髄スライス標本を用いてシナプス入力の解析を行うと、正常ではラットと同様に触覚を伝えるAβ線維は脊髄後角深層へ、痛みを伝えるAδやC線維は脊髄後角浅層ヘグルタミン酸を介して単シナプス性に入力されることが示された。一方、欠損マウスでは、グルタミン酸を介したAδやC線維の単シナプズ性入力に加え、単シナプス性のAβ線維の入力が脊髄浅層細胞において観察された。さらに、脊髄深層ではAβ線維の単シナプス性入力が減弱し、そのシナプス応答の振幅も著明に減少した。また、in vivoパッチクランプ法を用いて皮膚への生理的感覚刺激に対するシナプス応答を解析すると、脊髄浅層の細胞は侵害性の熱には応答せず、侵害性の機械的刺激に応答した。以上より、欠損マウスでは、触覚を伝えるAβ線維の脊髄深層への興奮性入力が減弱し、その入力は機械的痛みの伝達に関与する脊髄浅層に留まる。従って、欠損マウスでは触覚情報が痛覚回路へ誤入力し、非侵害性の触によって逃避行動を示す異痛症(アロディニア)を呈することが明らかになった。
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Research Products
(29 results)