2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18613012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
犬童 康弘 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (40244131)
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Keywords | 先天性無痛症 / 先天性無痛無汗症 / 遺伝性感覚自律神経性ニューパチーIV型 / 神経成長因子 / 神経成長因子受容体 / チロシンキナーゼ型受容体 / TRKA / NTRK1 |
Research Abstract |
先天性無痛症は常染色体劣性遺伝形式をとるが、臨床的・病理学的に複数の病型があることが知られている。私たちが研究を続けている先天性無痛無汗症(CIPA)は「遺伝性感覚自律神経性ニューロパチーIV型(HSAN-IV)」とも呼ばれている。CIPAでは、チロシンキナーゼ型神経成長因子受容体遺伝子(TRKA)の機能喪失性変異により、胎児期における神経成長因子(NGF)のシグナル伝達が障害される。この結果、NGFに依存する神経の分化・生存・維持ができないためアポトーシスを起こす。その表現型として、患者では侵害刺激を伝える小径の有髄神経や無髄神経が欠損し、また自律神経では交感神経の節後神経の一部が欠損することになる。 一方、「遺伝性感覚自律神経性ニューロパチーV型(HSAN-V)」とよばれる先天性無痛症も報告されている。HSAN-Vの患者では、発汗障害などの自律神経障害はなく、精神遅滞も認められないとされている。しかし、症例は少なく、疾患概念について専門家の間でも混乱がある。英国の研究グループから、「遺伝性感覚自律神経性ニューロパチーV型(RSAN-V」症例について、1例のTRKA遺伝子の解析結果をもとに、CIPAとHSAN-Vは同一遺伝子の変異による疾患で、表現型だけが異なるものとの報告がなされた。しかし、彼らの報告には不明確な点がある。そこで、私たちは、両親に血族結婚があり、かつ発汗障害を伴わない典型的なHSAN-V症例で、臨床症状からもあきらかにCIPAと区別できる患者についてTRKA遺伝子の解析と神経組織学的検査を行うことで、HSAN-V症例の全部ではないが少なくとも一部の症例では、その責任遺伝子はTRKA以外のものであるとの結果を得た。このことから先天性無痛症には遺伝的異質性があることが強く示唆される。
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