2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18613012
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
犬童 康弘 Kumamoto University, 医学部附属病院, 講師 (40244131)
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Keywords | 先天性無痛症 / 先天性無痛無汗症 / 遺伝性感覚自律神経性ニューパチーIV型 / 神経成長因子 / 神経成長因子受容体 / チロシンキナーゼ型受容体 / TRKA / NTRK1 |
Research Abstract |
先天性無痛無汗症(CIPA)は温覚・痛覚と発汗機能を欠如し、精神遅滞などの中枢神経障害を伴う常染色体劣性遺伝の疾患である。私たちは、1996年にその原因がチロシンキナーゼ型神経成長因子受容体遺伝子TRKA(NTRK1)の機能喪失性変異であることをはじめて報告した。患者では、神経成長因子(NGF)に依存するニューロンの生存・維持が障害される結果、これらのニューロンが欠損することになる。 遺伝子ノックアウトマウスの解析は、ヒトの遺伝性疾患の表現型を説明するのに有用である。しかしCIPAの場合、その特徴である発汗障害がマウスではみられないなど、表現型がヒトとマウスでは異なる点も明らかにされている。これは、動物種による体温調節の生理学的機構の違いを反映している。CIPAとマウスの両者の表現型を比較することは、種差による問題点を明らかにする上で有用なだけでなく、一方だけでは実施することが困難な病態解析の機会を与えてくれる。 CIPA患者では「痛み」の感覚を伝える「侵害受容ニューロン」と自律神経系の「交感神経ニューロン」の両者が欠損する。侵害受容ニューロンは痛みだけなく、生体内で起こっている種々の生理学的反応をモニターして、その情報を絶えず脳に伝える「内感覚」に重要な役割をはたす。内感覚は、皮膚、筋肉、関節、歯、血管、内部臓器などに関するさまざまな機械的負荷、温度変化、化学変化、代謝過程などの情報を、脳へと伝達することで生体の恒常性維持に役立っている。 CIPAの患者は、内感覚により身体の内部に関する情報をモニターすることができず、さらに交感神経を介して恒常性を維持する機能が欠如している。このため、患者は常に生存にとって不利な状態にある。CIPAの分子病態の解析結果は、NGFが内感覚神経と交感神経の生存・維持に必須であることを強く示唆する。
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Research Products
(6 results)