2006 Fiscal Year Annual Research Report
インド洋大津波緊急医療救援データに基づく抗生剤使用に関する研究
Project/Area Number |
18614002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
奥村 順子 金沢大学, 自然科学研究科, 助教授 (40323604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 和子 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (80324094)
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Keywords | 感染症 / 抗生物質 / 国際緊急医療救援 / 自然災害 |
Research Abstract |
2005年1月,バンダアチェにおけるインド洋大津波緊急医療チームの診療所を受診した1891名の患者のうち367名が津波により受傷していた.このうち創部感染あるいはその恐れのため抗生剤を使用した患者は251名(215/367 59%)であったが,同一の抗生剤を繰り返し長期にわたり使用するケースが少なくはなく,通常の創部感染とは異なる起因菌の存在と耐性菌が原因として疑われた.この原因究明ため,診療記録の解析および津波の水を構成した環境水・土壌中の細菌の種類と薬剤耐惟レベル調査を実施した. 抗生剤を使用した251名中82名(22%)が3月中句まで受傷部の治療を継続していた.これらの患者に使用されていた主な抗生物質はアンピシリン(ABPC)もしくはアモキシシリン(AMPC)カプセルであった.レボフロキサシン(LVFX)もしくはシプロキサシン(CPFX)を使用した患者は25名(25/251 10%)のみであった.LVFXもしくはCPFXを治療開始後3日以内に使用した患者群と3日以降に使用した患者群の完治までに要した日数(中央値)は,前者では2.5日,後者では20.0日で,前者の治療日数が有意に短いことが判った(p<0.01). 2006年8月バンダアチェにおいて,津波の被害の大きかった11箇所において海水,河川水,下水,井戸水,湖沼水を採取し(n=49)細菌検査を実施した.2箇所については土壌も採取し(n=10),原虫や真菌などの微生物検査を実施した.水49検体中Aeromonas sp., Vibrio sp., Klesiella sp., Proteus sp.を含むものはそれぞれ24,16,15,6検体であった.これらのほとんどがABPCおよびAMPCに耐性を獲得していた.一方,全ての検出菌がCPFXに感受性があった. 津波の水にはグラム陽性菌と陰性菌が混在し,検出されたグラム陰性菌に対してはAMPCが無効であることがわかった.このことから,津波などの汚染された環境水中で受傷した患者の治療において,AMPCを3日間投与しても無効な場合にはCPFXやLVFXなどのニューキノロン系抗菌薬に切り替えるのが効果的ではないかとの結論に達した.次年度は,この点につき考察を深め津波などの災害時の抗生剤使用のあり方に関するガイドラインを作成する予定である.
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Research Products
(1 results)