Research Abstract |
平成18年度は,ドライビングシミュレータを用いて,先行車を追従走行する際の運転行動信号の生成手法について検討した.我々は,運転行動が再帰的な過程であると仮定し,運転者が追従走行において「走行環境を認知しペダル操作量を決定する」部分をドライバモデルとしてモデル化し,ドライバモデルに基づいてペダル操作信号を生成した. 生成実験のために,ドライビングシミュレータを用いて3名の運転者が直線道路において先行車を追従走行する際の走行観測信号を収録した.運転者3名のうち2名は,十分に車間距離を取り,ペダル操作量が一定な傾向にあり,残りの1名は,ペダルを頻繁に踏み込み,車間距離を詰める傾向にある運転者である.先行車パターンは,少し混雑した高速道路での走行を模擬した速度パターンと,様々な速度が出現する人工的な速度パターンの2種類を用いた. ドライバモデルとしては,走行パターンを直接蓄積するメモリモデルと,確率モデルである混合ガウスモデル(GMM)を比較した.メモリモデルを用いる場合は,記憶した走行パターンの中で,直前の走行条件に最も適合した走行パターンを選択し,その次の時刻のペダル操作量をそのまま推定値として生成した.GMMを用いる場合は,信号の時間微分を考慮した特徴ベクトルに対して,最大事後確率を与えるペダル操作量を推定値として生成した.その結果,どちらのドライバモデルも,運転者本人の特徴を捉えたペダル信号を再現できることがわかった.また,推定された信号がどの程度個人性を再現できているかを客観的に評価するために,生成された走行観測信号に対して信号対歪比(SDR)を求めた.モデル化に利用しなかった運転者本人のアクセル操作信号に対する生成信号のSDRを比較した結果,メモリモデルの場合に4.80[dB],GMMの場合に6.54[dB]で,GMMの方が高いSDRが得られた.(786文字)
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