Research Abstract |
立位姿勢保持時の体性感覚情報は,感覚参照機構を介し姿勢制御に寄与すると考えられている。本研究は,(1)足底圧刺激と下腿三頭筋振動刺激の速度によって姿勢応答が異なること,(2)その刺激間の関係について明らかにすること,および(3)その発達の様相を明らかにすることを目的とする。昨年度までに,被験者12名にて,中足骨頭部足底圧刺激および下腿三頭筋振動刺激の速度の違いによって,誘発される姿勢応答(前、後傾)が変化すること,およびその臨界値を明らかにできた。本年度は,その結果を再確認し,さらに次のような結果を得た。(1)前傾をもたらす臨界値に近接する両低速刺激では,姿勢は変化しない。(2)いずれか一方が後傾をもたらす臨界値に近接する高速刺激では,後傾することが多い。(3)後傾姿勢をもたらす臨界値に近接する両高速刺激では,後傾する。(4)後傾を開始する時間は,両高速刺激の方が早い。両刺激とも低速の場合の結果は,両刺激が感覚参照系において比較され,マッチングしているので姿勢が変化しなかったことを示していると考えられる。いずれかの刺激が高速の場合には,その刺激に対応するように姿勢が変化(後傾)することを意味していると考えられる。これらの結果は,体性感覚情報について,立位位置を知覚するための参照枠を構成、維持し続けるためのものと,姿勢の変化を知覚するためのものとに区分できるとする仮説を支持するものであると考えられる。
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