Research Abstract |
[研究目的]魚類のウロコは,ヒトの骨に代わる組織培養系として従来の骨芽細胞株では調べられなかった骨形成、骨吸収の相互作用を,再現できる。昨年度は,1)骨代謝亢進ウロコと炎症性骨吸収亢進ウロコモデルを作成した。また,2)超音波負荷を行うための超音波負荷システムも開発した。そこで今年度は,1)通常ウロコへ1MHz超音波を曝露し,マーカー酵素活性と遺伝子発現から最適曝露条件を検討した。さらに,2)同じ最適条件で骨吸収、骨形成が共に増加した骨代謝亢進ウロコおよび炎症性骨吸収亢進ウロコを超音波曝露し,骨吸収や骨形成への効果を検討した。 [研究成果]1)通常ウロコに対し,パルス繰り返し頻度0.5Hz,1MHz超音波の強度とその後の培養時間を変えて検討した。その結果,強度60mW/cm2 ISATAで曝露し,18〜24時間培養すると骨形成を行う骨芽細胞活性は有意に上昇することが明らかとなった。一方,骨吸収を行う破骨細胞活性は,変化しなかった。骨芽細胞の活性が上昇したので,骨芽細胞で特異的に発現しているマーカー遺伝子insulin-like growth factor-I(IGF-I)とestrogenreceptor(ER)の遺伝子発現をRT-PCRにより調べた。その結果,IGF-IのmRNAレベルは超音波刺激後3時間で増加し,ERのmRNAレベルも18時間で増加した。従って,遺伝子レベルでも骨芽細胞を活性化させることが示された。2)同条件の超音波曝露、培養により、通常ウロコより破骨細胞活性が増加した骨代謝亢進ウロコでは,骨芽細胞の活性の有意の増加に加え,破骨細胞活性の有意の低下がみられた。一方,炎症性骨吸収亢進ウロコでは,骨芽細胞、破骨細胞活性共に変化しないことが明らかとなった。したがつて,低強度超音波曝露は,閉経後の骨代謝亢進型骨吸収は抑制できる可能性が,炎症性の骨吸収の治療には適さない可能性が示唆された。
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