2006 Fiscal Year Annual Research Report
文化財のナノ構造分析のための極微量試料採取法の開発
Project/Area Number |
18650260
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
北田 正弘 東京芸術大学, 大学院美術研究科, 教授 (70293032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐野 文良 東京芸術大学, 大学院美術研究科, 助教授 (10334484)
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Keywords | 文化財 / 試料採取法 / フォーカスド・イオンビーム / ナノ構造 / 着色 / 透過電子顕微鏡 / 四分一 / 鉛丹 |
Research Abstract |
文化財の保全あるいは保存のためには、それを構成する材料の研究が必要であるが、文化財は数が少なく、また、貴重であるため、その研究は大きな制約を受けている。特に、修復のためには文化財の材質と作製プロセスなどを知ることが重要である。研究手法としては非破壊と試料を採取する破壊試験がある。この中、非破壊試験では得られる情報量は非常に少ない。本格的に修復を行うためには、ある程度の破壊実験が必要である。しかしながら、文化財を傷つける程度を限りなく少なくするための方法が望まれる。 本研究は極めて少量の試料採取で済む方法として、加速したGaイオンを用いるFIB(フォーカスド・イオンビーム)法に着目し、これによって、極小で最多の情報量を得ることを目的にしている。この方法で、20x10x0.1μmサイズの試料採集で、どこまで情報が得られるかを検討した。このサイズでは肉眼では認識できず、100倍以上の光学顕微鏡で認識できる大きさであり、文化財の傷は無視できるに等しい。これを実際の文化財に適用して情報量の多寡を調べた。18年度は、先ず四分一と呼ばれるCu-Ag合金を伝統的方法で表面酸化(煮色着色)した層の内部微細構造を透過電子顕微鏡で解析した。その結果、Cuが優先酸化し、Agは微細に分布する構造になっており、Agが光学的効果をもつために独特の色を呈することを明らかにした。また、日本画の顔料として奈良時代から使われている鉛丹の構造について、江戸時代の木版画を試料とし、透過電子顕微鏡で解析した結果、10-20nmサイズの四三酸化鉛が顔料として用いられていること、媒材の膠および紙繊維にPb原子が拡散し、黒化の原因になっていることを解明した。これらの研究によって、本研究法が極めて有効なことを確認し、次年度にさらに種々の文化財および材料で研究を進める。
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Research Products
(3 results)