2007 Fiscal Year Annual Research Report
文化財のナノ構造分析のための極微量試料採取法の開発
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18650260
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
北田 正弘 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 大学院・美術研究科, 教授 (70293032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐野 文良 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 准教授 (10334484)
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Keywords | 文化財 / 微小試料採取 / フォーカスドイオンビーム法 / 鉛白 / PbSナノ粒子 / 柿右衛門磁器 / 酸化鉄ナノ粒子 |
Research Abstract |
文化財の保存は保存環境、環境保存における劣化、劣化したものの修復等多岐にわたる。これらに対処するためには、文化財を構成する物質あるいは材料のナノレベルの詳細を知ることが重要である。また、文化財がどのような物質あるいは材料からなっているか、という学術的な知の蓄積も重要である。本研究はこれらの課題を解決するために、貴重な文化財の破損を最小限に留めて最大限の材料学的情報を得ようとするのが目的である。このために、採取する試料の寸法を10μm程度とする方法を開発し、実際に採取した試料を用いてナノ構造を解明することにある。この寸法は採取された領域を肉眼で認識することは困難で、300倍の光学顕微鏡を使用して認められる大きさである。このために、加速したGaイオンを用いるフォーカスド・イオン・ビーム(focused ion beam: FIB)法に着目し、検討を進めている。本法の応用範囲を調べる為、日本画、外国画、陶磁器、金属、生体材料等からなる文化財試料を用いて、実際にFIB法を用いて試料を作成し、電子顕微鏡でナノ構造を観察している。19年度は顔料の劣化、陶磁器の釉薬部におけるナノ構造、生体由来材料のナノ構造等について検討した。 中国絵画に使われている鉛白の黒化部分から上記寸法の試料を採取し、透過電子顕微鏡観察した結果、数から数10nmのPbSナノ微粒子が見出された。この層は数10nmでありX線回折では検出できない。陶磁器では、約300年前に作られた柿右衛門様式の磁器に塗られている赤釉薬について試料を採取し、透過電子顕微鏡により観察した。その結果、数10nmの酸化鉄(Fe_2O_3)ナノ粒子が存在し、透明釉薬として鉛ガラスが使われ、美しい色合いが生じていることを明らかにした。生体材料では、象牙を観察し、アパタイトの数nmナノ粒子とアモルファスが混在していることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)