2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18651001
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
持田 陸宏 名古屋大学, 高等研究院, 特任助教授 (10333642)
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Keywords | 有機エアロゾル / 表面張力 / 雲過程 / ケルビン効果 / 気候変動 |
Research Abstract |
本研究では、大気エアロゾルに含まれる有機物水溶液の表面張力を、バルクおよび微粒子の状態で計測する手法を確立し、エアロゾル粒子が雲過程を通して気候におよぼす影響を理解する上で重要な、その表面張力の特徴を明らかにすることを目指している。 本年度は第一に、石英フィルタ上に捕集されたエアロゾル試料から水溶性成分を抽出し、そのバルク水溶液の表面張力を測定する手法について検討を行った。まず、ハイボリュームエアサンプラーを用いて採取された大気エアロゾル試料の一部を超音波抽出により水抽出し、メンブレンフィルタによるろ過後、その水溶液中に含まれる有機炭素の濃度を全有機態炭素計を用いて測定した。次に、表面張力計を用いて、水抽出試料の原液および希釈水溶液の表面張力を測定した。得られた有機態炭素濃度、表面張力および希釈倍率から、水溶液の表面張力を有機炭素濃度の関数として求めた。測定された表面張力は、先行研究により報告されている他のエアロゾル試料の値の範囲内であり、本手法を用いることで、大気有機エアロゾル粒子の表面張力を間接的に測定できる展望が開けた。 第二に、吸湿特性測定用タンデムDMA(HTDMA)を用いてエアロゾル粒子の吸湿成長因子の粒径依存性を測定し、ケルビン効果の程度から微粒子の表面張力を推定する方法を検討した。人工的に発生させた硫酸アンモニウム粒子をHTDMAに導入して吸湿成長因子を測定したところ、ケルビン効果により微小な粒子ほど成長因子が低くなる傾向が観察された。また、同様の手法を用いて、フィルタ試料から抽出された水溶性成分から粒子を発生させ、その吸湿成長因子の粒径依存性を得ることができた。今後、得られたデータを用いて表面張力の導出に関する検討を進める予定である。
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