2006 Fiscal Year Annual Research Report
海棲哺乳類の幹細胞分化に対する新規汚染物質ペルフルオロオクタンスルホン酸の影響
Project/Area Number |
18651026
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
星野 広志 北海道大学, 創成科学共同研究機構・教務補助員 (00419954)
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Keywords | 幹細胞 / 細胞分化 / 脂肪細胞 / 化学発癌 / 発達異常 / テロメラーゼ |
Research Abstract |
本課題では、化学物質が海棲哺乳類の細胞分化に対する毒性影響を評価するためにトドやアザラシの体性幹細胞を不死化した培養細胞系を作ること、および作成した細胞を用いて新規の海洋汚染物質であるペルフルオロオクタンスルホン酸が細胞分化に与える影響を調べることを目的としている。その理由は、アザラシなど海棲哺乳類では、化学物質により腫瘍や骨形成異常などの細胞分化や組織発達の異常に関連した毒性影響が起きていることが報告されているが、毒性影響評価のための適切なモデル実験系が無いため、化学物質と異常との因果関係が不明だからである。また、ペルフルオロオクタンスルホン酸は世界規模の汚染が近年明らかになった新規汚染物質であり、細胞分化を調節するペルオキシソーム応答型受容体ガンマに結合することが示唆されているからである。 平成18年度は、1)ゴマフアザラシおよびトドにおいて脂肪組織から体性幹細胞を単離すること、2)遺伝子導入により単離した細胞を不死化すること、および3)不死化した幹細胞の多分化能について明らかにすることに取り組んだ。 まず、体性幹細胞を単離して培養細胞系を作成する実験では、脂肪組織の間質問葉系分画から得た細胞群から限界希釈法により多分化能を有する細胞の単離を試みたが、細胞濃度を希釈することで細胞が分裂停止に陥ってしまい、個々の細胞を単離することができなかった。 そこで、細胞が分裂停止に陥ることを避けるため、まず間質問葉系分画から得た細胞群に不死化遺伝子であるヒトテロメラーゼ遺伝子をレトロウィルスにより導入することを試みた。その結果、ゴマフアザラシの脂肪組織の間質問葉系分画由来の細胞群においてヒトテロメラーゼmRNAを発現させることに成功した。 遺伝子導入が成功した細胞群について、まず脂肪細胞への分化能について確認したところ、遺伝子導入した細胞群においても、導入前の細胞群と同様に脂肪細胞への分化が確認された。
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