2006 Fiscal Year Annual Research Report
「脆弱性」概念の再構築:福祉防災学の視座確立と実践モデルの開発
Project/Area Number |
18651086
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
立木 茂雄 同志社大学, 社会学部, 教授 (90188269)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鵜飼 孝造 同志社大学, 社会学部, 教授 (00203498)
上野谷 加代子 同志社大学, 社会学部, 教授 (40123583)
板垣 竜太 同志社大学, 社会学部, 専任講師 (60361549)
山下 淳 同志社大学, 政策学部, 教授 (30174668)
林 春男 京都大学, 防災研究所, 教授 (20164949)
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Keywords | 災害時要援護者 / 避難支援 / 災害脆弱性 / 災害時要援護度 / 災害時要援護度のGIS表現 / ハザードマップ / 避難支援ガイドライン / 在宅人工呼吸器装置患者 |
Research Abstract |
平成18年度は、昨年の台風23号水害によって大きな被害が出た豊岡市で被害にあった、特定疾患者(在宅酸素療法患者等)と、これらの市民層に対して日常的な介護や保健・医療サービスを提供する事業者および自治体担当者を対象にエスノグラフィー調査を実施した。その結果、災害脆弱性は、主体の側の要因としては当事者の障がいの程度だけでなく災害イメージの形成度、客体の側の要因として対応する社会資源とどの程度つながっているか、また住宅・居室の安全性などが関係していることが示唆された。 災害時要援護者の個別避難支援プランづくりにあたっては、行政が保有する保健・福祉情報を民生委員や自主防災組織と共有化できるかどうかが問題になるが、この点については、避難支援に関する情報を1)災害時要援護者存在情報と2)災害時要援護者支援情報に分け、1)存在情報については氏名・住所など必要最低限にとどめ、行政内部あるいは地域の民生委員や自主防災組織の役員にも共有するかは、それぞれの自治体で決め、そのリストをもとに当事者や家族を訪問し、次に当事者の同意・自己決定にもとづいて個別の2)支援情報を作成していくのが妥当な方法である。さらに、この際の個人情報が漏洩しないような手段を講じることの必要性が認識された。 また、災害時要援護者の把握にあっては、対象者の主体的側面(要介護度等)、客体的側面(社会的孤立度等)だけでなく、当該地域のハザード情報と重ね合わせて絞り込む必要性がある。そうしないと対象者の数が多くなりすぎて避難支援プランの実行どころか、作成作業さえ、地域も行政も対応できない、という点を明らかにした。 上述の個人情報を2種類に分ける考え方、およびハザード情報と脆弱性情報を重ねる考え方は平成19年4月に内閣府が公表した「災害時要援護者避難支援ガイドラインにもとづく事業の進め方」に直接反映させることができた。
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