2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18652006
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
林 隆嗣 Sendai National College of Technology, 総合科学科, 准教授 (00322975)
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Keywords | アバヤギリ派 / 有為無為決択 / 解脱道論 / 上座仏教 / Visuddhimagga / スリランカ / チベット / アビダンマ |
Research Abstract |
昨年度収集したチベット資料、漢文資料、パーリ語資料を比較対照しながら引き続き厳密な校訂作業を行ない、それに基づいて文献の解読をさらに進めた。特に今年度は、スリランカで生まれ、インドからチベットに伝わった無畏山寺派(アバヤギリ派)の五蘊・十二処・十八界に関する思想、縁起思想を解明した。さらに、『解脱道論』の漢訳や現代語訳における誤りの多くを『有為無為決択』と比較することで初めて明らかにすることが可能となった。これにより、スリランカで勢力を二分していた無畏山寺派と大寺派の思想的差異、および無畏山寺派のチベットへの伝播を解明するための基礎を築いた。それらの成果は、近刊予定の雑誌『佛教研究』第36号(2008)において、『有為無為決択』の翻訳と共に掲載されることになっている。 また、初期パーリ蔵外文献Petakopadesa(および漢訳『陰持入経』)から、無畏山寺派の『解脱道論』・『有為無為決択』、そしてVisuddhimaggaに代表される大寺派のパーリ註釈文献へと思想が伝承され展開していく過程を明らかにするため、現観(abhisamaya)思想を取り上げ、その中で用いられる比喩を比較検討した。その成果は、『2008年第4回韓國佛教學結集大会論集』(2008)において発表された。 本研究を通じて、インドやチベットへと広範囲に展開するスリランカ系仏教のダイナミックな思想的・人的交流が確認された。それにより、従来もっぱらパーリ文献のみを手がかりとしていた上座仏教研究の分野においてチベット文献の重要性を示し、研究に新たな方法と指針を与えることが可能となったと言える。
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Research Products
(3 results)