2006 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀におけるイタリア王国の「美術外交」に関する研究
Project/Area Number |
18652020
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
河上 眞理 京都造形芸術大学, 芸術教育研究センター, 客員研究員 (20411316)
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Keywords | 美術史 / 美術学校 / 美術教育 / イタリア / 19世紀 / サンフランシスコ / フランス / 外交 |
Research Abstract |
本研究の初年度である平成18年度は、イタリア王国における美術外交に関する情報収集を行うことを第一の課題とし、イタリアにおいて一次史料の博捜、及びその分析を精力的に行った。また、美術学校の実地調査として、アメリカにおけるサンフランシスコ美術学校に関する調査を行った。 サンフランシスコ美術学校については、その設立期の状況を解明すべく、同地図書館などにおいて、文献、教材、同時代文献資料の調査を行った。その結果、同校がフランスの援助によって設立された後に、イタリアが同校に関わろうとしていたこと、そして、本件によってイタリア自身が「イタリアは美術の国である」との自覚を新たにしたことと、美術外交開始との関係性があることが明らかになった。この点についてのさらなる解明には、当時の美術学校に関する伊仏間の比較研究の必要があろう。 イタリアでの現地調査では、文書館などにおいて、本研究課題に関係する一次史料の調査を行うと共に、同地図書館などにおいて、書籍、新聞、雑誌など同時代文献資料の調査を行った。また、本研究の対象となる時代において、長期間、外務大臣の職にあったエミリオ・ヴィスコンティ・ヴェノスタに焦点を当てた調査を行った。以上の調査の結果、イタリアが国際関係の中で「イタリアは美術の国である」との自覚を強める機会や出来事が多数在ったことと、「美術外交」の推進との間に直接的な関係性を見出せることが明らかになった。また、イタリア王国における「美術外交」の開始を巡る人的相関図を描き得る材料を得た。「美術外交」という名の外交政策の有無については、今後の研究によって明らかになるだろうが、少なくとも、政府中枢には「美術外交」を意識していた人物が複数存在しており、実質的には「美術外交」が為されていたと、明言し得るに足る確信を得た。
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