2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18652032
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
菅谷 憲興 立教大学, 文学部, 助教授 (50318680)
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Keywords | フローベール / フランス文学 / 近代小説 / 政治史 / 草稿 / データベース / 国際情報交換 / フランス |
Research Abstract |
本年度の研究成果は、大きく3つに分けることができる。 第一に、フローベールの「読書ノート」の電子エディション化に関して、リヨンのフランス国立科学研究センター所属の研究者ステファニー・ドール=クルレ氏と協力して、とりあえず2215枚に及ぶ自筆草稿の写真版をすべてインターネットのサーバーに流し込むことに成功した。現在のところこの写真版は、電子エデヨション作成に参加しているごく少数の研究者にのみ閲覧可能であるが、2009年度以降の一般公開を目指して現在ルーアン市立図書館と交渉中である。 第二に、自筆草稿の転写に関しては、フローベールが自らの作品に対する同時代の批評に関して取ったノート(草稿整理番号g226-8,f208-232)を主に解読した。この作業の過程で、作品の受容の問題が、文学テキストの孕む政治性を考える上でとりわけ重要であることが明らかになった。実際、同時代の批評の中には、フローベールの諸作品を1848年の二月革命、あるいは民主主義と関連させて論じる論考が少なからずあり、その一例として、ポンマルタンという19世紀の批評家による『ボヴァリー夫人』論を取り上げた研究発表を、3月にコロラド大学の国際シンポジウム「フローベールと政治」において行なった。 第三に、その他にも2つの国際シンポジウムにおいて世界各国の研究者達と活発な交流を図った。具体的には、6月にフランスのスリジー・ラ・サルでのシンポジウム「作家フローベール」に、11月にはパリ大学主催のシンポジウム「『ボヴァリー夫人』と知」に参加し、研究発表を行なった。これらの発表はすべて、早ければ来年フランスで出版される予定である。最後に、フランスの『Magazine litteraire』誌の11月号に、日本におけるフローベールの受容を論じた短い論考を掲載したことを付言しておきたい。
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Research Products
(3 results)