2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18652042
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
矢野 謙一 熊本学園大学, 外国語学部, 教授 (00271453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 文隆 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (30251870)
植田 晃次 大阪大学, 言語文化研究科, 助教授 (90291450)
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Keywords | 言語管理 / 技法 / 朝鮮文化語 / チュチェ / 言語思想 |
Research Abstract |
今年度の研究は、「思想」、「行動」、「技法」の3つの方面から対象に接近するという研究計画にそって、「思想」を矢野、「行動」を植田、「技法」を岸田が担当し、それぞれが資料の解読にあたり、4回の研究会を開き、それぞれの研究の成果を口頭で発表した。 「思想」からは北朝鮮で提唱されている「チュチェの言語理論」の全体像の解明、用語の解読、形成史が対象となった。この結果、「朝鮮文化語」は、ソウルでいう「標準語」を規範化するのとはことなり、朝鮮労働党のために朝鮮語を形態、文法、意味、文体で人為的に手を加え、政治に利用できるよう開発している言語であり、「チュチェの言語理論」とは、その根拠を金日成、金正日の発言におき、朝鮮語改造の方向を示したものであると解釈できた。 「行動」からは書き言葉の主たる担い手である知識人に対する政策を解明し、ハングル専用と情報の分断の関係、知識人管理のための手法とその結果をさぐった。金日成の著作を逐一調べた結果、「知識人」とは日本でいう公務員や教育者、技術者などになりうるほどの知識をもった人材を指し、政策的に養成しようとしているが、朝鮮労働党の要求にかなう知識人が慢性的に不足していることが判明した。同時に、知識人の養成と管理に朝鮮文化語が果たしている役割も明らかになった。 「技法」からは『主体の朝鮮語学発展史』を中心に研究を進め、チュチェの言語思想以前の1963年までとそれ以降の言語学の研究成果について概況を調べた。ここでは1963年から言語規範の確立のための研究が急に活発になっていることがわかった。
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