2007 Fiscal Year Annual Research Report
標準語発話に見られる母方言プロソディー干渉の実態と理論的分析
Project/Area Number |
18652043
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
窪薗 晴夫 Kobe University, 人文学研究科, 教授 (80153328)
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Keywords | 日本語 / 鹿児島方言 / 甑島方言 / アクセント / 複合法則 / 二型アクセント |
Research Abstract |
今年度は鹿児島方言と甑島方言(鹿児島県薩摩川内市)の2地点において方言アクセント調査を行った。鹿児島方言については、中年層(50歳以上)と若年層(20歳前後)の話者を対象に、新造の人名(銀男、橋子、飴也など)をどのようなアクセントで発音するかを調査した。その結果、中年層はA型とB型の区別が明瞭で、伝統的な複合アクセント規則(複合法則)に従って新造語を発音するが、若年層は個人差が大きく、大半の話者が複合法則を5割ほどしか守っていないという結果を得た。その一方で、二型アクセント体系や音節方言の特徴はいまだに失われていないということも確認した。誤答分析の結果、若年層のアクセントは東京方言(標準語)のアクセントの影響を強く受けているということがわかった。この調査研究の成果は「鹿児島方言のアクセント変化-複合法則の崩壊-」(『神戸言語学論叢』5)に詳しく報告した。 甑島方言については、里地区(旧里村)と瀬上地区の2地点において高年層を対象としたアクセント調査を行った。この結果、前年度に行った手打地区(下甑町)の中年層と基本的に同じアクセント体系、規則を持つことを確認した。特に、3モーラ以上の長さの語に二つの山が現れることと、文中においては二つ目の山が消えて語頭の山だけが残ることを明らかにした。今後さらに調査を重ね、甑島方言の地域差や年代差を分析し、鹿児島方言との相違点を明らかにしていく計画である。
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