2007 Fiscal Year Annual Research Report
近現代日本における「希望」の社会的位相-岩手県釜石地方を事例として-
Project/Area Number |
18652068
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平石 直昭 The University of Tokyo, 社会科学研究所, 非常勤講師 (20013013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅崎 修 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (90366831)
中林 真幸 大阪大学, 経済学部, 准教授 (60302676)
土田 とも子 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (70013018)
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Keywords | 希望 / 釜石 / オーラルヒストリー / 社会思想史 / 労働史 |
Research Abstract |
本研究の目的は、伝統的な文献史学の手法にオーラル・ヒストリーの方法を組み合わせて様々な社会諸階層の人々のライフ・ヒストリーを辿ることを通して、「希望」の社会的位相を考えることにある。この課題に接近するため、昨年度は経済学や政治学、法学、社会学といった社会科学諸分野の研究者と共同して、かつて製鉄の町として栄えた岩手県釜石市をフィールドとする総合的な地域調査を実施した。 本年度は釜石地域調査をディスカッションペーパーとしてまとめ、さらに『社会科学研究』59巻2号、3・4合併号で特集を組んで研究所の内外に発表した。具体的には以下のような内容である。「地方の希望-希望学・釜石調査の概要」(中村尚史)では、(1)ローカル・アイデンティティの再編、(2)希望の共有、(3)ネットワーク形成が、地方の希望を考える上で重要な論点であることが明らかにされた。また、「釜石製鐵所の経営合理化をめぐる労使の対応」(青木宏之)では、1960年代前半以降つづいた釜石製鐵所の厳しい合理化の中にあって労使関係は比較的安定しており、それが線材工場としての存続につながったことを、「組織の希望」という観点から明らかにした。「釜石市長としての鈴木東民」(宇野重規)では、1955年以降12年にわたって市長であった鈴木東民の仕事を<地域に根ざした福祉政治>、<開かれた土着主義>として、その意義を再評価した。「女性の現状と政策にみる地域の希望」(土田とも子)では、釜石市の男女共同参画政策が女性の直面する課題に届いていないことを明らかにし、女性の地位向上が地域の希望にとってのポテンシャルであることを析出した。 以上のように釜石調査の結果をまとめたほか、今年度は外国と国内の文化人類学、社会学研究者との共同研究を行い、希望と社会の関係の解明に新しい地平の一端を切り開くことを試みた。 釜石調査と国際共同研究の成果は今後書物にまとめる予定である。
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Research Products
(9 results)