2008 Fiscal Year Annual Research Report
国際公共海域における「遺伝子探査」をめぐる科学・ビジネス・法-国際法的枠組の模索
Project/Area Number |
18653004
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
柴田 明穂 Kobe University, 国際協力研究科, 教授 (00273954)
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Keywords | 国際法学 / 遺伝子探査 / 科学技術 / 南極海域 / 深海底 |
Research Abstract |
本研究は、「遺伝子探査」(biological prospecting=BP)活動を巡る科学、ビジネス、そして関連する国内・国際法の現状と課題を明らかにし、その総合的検討を通じて、「遺伝子探査」活動を枠づける国際法規範・組織のあり方について、政策指向的に考察することを目的とする。 昨年度までは、一般的に、国際公共海域における「遺伝子探査」の実態把握と当該活動の規律可能性とあり方にっき、主に、南極条約協議国会議、国連海洋法条約、そして生物多様性条約の下で行われている議論を中心に考察した。その考察を踏まえて、本年度は、関係者とのインタビューや関係条約会議一次資料などを参考に、BPと称される一連の活動プロセスを、最初の採取行為、その後の実験室での研究、特許取得、そしてその商業的開発に区分して把握すべきことを明らかにした。この区分を基に、BPをめぐる議論を整理すると、規制不必要論は、一般に、採取行為から特許取得までに着目し、これら活動はBPではなく国際公共海域における科学活動の自由を行使した活動であり、従って、「規律」は不要であるとの立場である。これに対して、一部NGOを含むBP規制促進派は、特許取得ないしそれを利用した商業的開発及び収益活動に着目し、そこで利用される「遺伝子資源ないし情報」の起源が「全人類の利益」に供されるべき国際公共海城から採取されている場合には、採取活動にまで遡ってBPとなり、その規制及び利益の国際社会への還元が必要であるという立場になる。 このように、「遺伝子探査」活動をめぐる法的対応は、「遺伝子探査」をどの範囲の活動とし、どのように性格づけるかに依存するが、現在のところ、それら問題につき国際的な合意に至っていない。国際法規範・組織の定立はその次の課題である。
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Research Products
(1 results)