2006 Fiscal Year Annual Research Report
政策評価過程における社会調査のエンパワーメント機能に関する研究
Project/Area Number |
18653041
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
土場 学 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 助教授 (50253521)
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Keywords | 政策評価 / 社会調査 / エンパワーメント / 環境政策 / 福祉政策 |
Research Abstract |
本年度は、(1)社会学、政治学領域を中心に政策立案・決定・評価過程における社会学および社会調査の役割に関する研究動向の把握、(2)政策過程における社会調査の役割についての研究枠組みの構築、(3)実際の政策過程における市民調査の事例(水俣市、厚木市)についての調査を行った。その結果、以下のことが明らかになった。まず、近年欧米においてM・ブラヴォイらが提唱する「公共社会学(public sociology)」という新たな社会学の構想が注目を浴びているが、これはある具体的な社会問題を市民との協働をつうじて解決をはかろうとする実践的な社会学の構想である。この公共社会学の構想においては、社会学者と市民は研究(調査)主体と研究(調査)対象の関係ではなく、ともに問題の当事者として研究主体かつ研究対象となる。このとき、社会調査は当事者による研究(当事者研究)の一契機となり、この研究過程にいては社会学者は調査専門家、調査主体、調査対象という三重の役割を果たすことになる。じっさいの市民調査の事例を見てみると、その市民プロジェクト全体の目的は問題の「自律的解決」にあるので、調査によって問題を客観的に分析するというよりは、調査をつうじて自らが問題解決の主体となるという「エンパワーメント」の機能が市民調査に求められることが分かった。したがって、社会学者は、たんに調査の専門的知識を提供するだけではなく、調査のエンパワーメント機能をいかにして達成するか、という観点から市民調査のプロジェクトに関わる必要がある。次年度以降は、事例研究をつうじてこの社会調査のエンパワーメント機能の条件を解明することを目標とする。
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