2006 Fiscal Year Annual Research Report
異文化に配慮した認知症高齢者の生活支援に関する研究
Project/Area Number |
18653051
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
黒田 研二 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (70144491)
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Keywords | 認知症 / 異文化配慮 / 母国語 / 回想法 / 在日コリアン |
Research Abstract |
異文化をもつバイリンガル話者である在日コリアン認知症高齢者の生活支援のため、母国語によるアクティビティとしての回想法をこころみた。神戸市長田区にある特別養護老人ホーム「故郷の家」(社会福祉法人「こころの家族」運営)を研究フィールドとし、よりよいケアの実践方法を見いだすことを目的として、中等度または重度の認知症をもつ4名の入所利用者に、本人の同意を得て個人回想法のアクティビティを実施した。その際、在日コリアン高齢者の過去の生活や体験について、1名につきそれぞれ母国語および日本語で2回、話を伺った。母国語および日本語の場面での会話の内容の分析、感情表出の状況の比較を通じて、いきいきとした会話をするための条件を検討した。会話内容の分析では、日本語と韓国語の間でのコード・スィッチングの数、回想法による会話における発話数、およびエピソード数を比較した。感情表出はオーストラリアで開発されたERiC(Emotional Responses in Care)評価尺度を用いた。その結果、生活史にみられる言語習得の背景と家庭や周辺の言語環境によってコード・スィッチング数や会話内容に個別的差が見られた。なお、母国語の場面での感情表出の豊かさが観察された。本研究により、中等度または重度の認知症であっても、バイリンガル話者の特徴である自然なコード切り替えが現れることが明らかになった。また、より豊かな自己表現ができる会話をするためには、個々の生活史に含まれる言語背景に配慮し、母国語を用いた会話が有効であることが明らかになった。バイリンガル話者である認知症高齢者といっても、来日した後の生活環境によって、言語使用の実態は異なるので、一人一人の個性を尊重した実践が必要である。
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Research Products
(1 results)