Research Abstract |
体積予想の拡張として,結び目の色付きJones多項式の漸近展開と,結び目補空間の基本群の,リー環sl(2,C)への表現との関係を調べた. 体積予想とは,R.Kashaev氏,村上順氏,および研究代表者により提唱されたもので,結び目の色付きJones多項式(sl(2,C)のN次元既約表現に対応した量子不変量)の極限が,結び目補空間の体積を決定するであろうというものであり,数学者のみならず物理学者からも大いに注目を集めている. 体積予想にはいくつかの拡張が考えられるが,今年度研究代表者が試みたものは,色付きJones多項式の極限だけでなく,漸近展開(正確には,色付きJones多項式のパラメータtにexp(α/N)を代入し,その対数を取ったものをNの関数と見たときの,無限大の周りでの漸近展開)のいくつかの項の位相的・幾何的意味を考えるというものである.特に,新たに導入したパラメータαが,基本群のsl(2,C)への表現とどのように関わっているかに注目した. 物理学者のS.Gukov氏との共同研究により,上述の漸近展開の定数項にはあるReidemeister torsionが現れるであろうと予想されていたが,本研究ではどういった表現に対応したReidemeister torsionが対応するかを考察した.特にtorus結び目について,以前研究代表者の計算した漸近挙動を精密に調べることで,定数項の具体的な形がわかった.今後,これがどういった表現に対応しているかを研究する予定である.また,8の字結び目についても同様の考察を行なった.(ただし,漸近挙動に関する厳密な証明は与えられていない.)
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