Research Abstract |
検出器の形状に特化した電場計算のシミュレーションを,電場計算プログラムMAXWELL2Dを用いて行った。微小突起の形状は,準備実験のための形状を選び,ワイヤを陽極面上に等間隔に配置した。シミュレーションでは,ワイヤの直径,ワイヤの配置間隔,及び極板間の距離を変化させ,十分な増幅(10^6倍程度)の起こる印加電圧を求め,そのときの検出効率や,検出時間を調べた。結果は,直径50μmのワイヤを配置した場合,ワイヤを持たない場合(RPCに相当)に比べて,低い印加電圧で同じ増幅率が得られることが分かった。しかし,ワイヤ間に比較的電場の弱い領域ができることが分かった。この領域において,ガスが電離されてできた電子に対する検出時間は,その領域以外でできた電子の検出時間に比べて,長くなることが分かった。しかし,検出時間が長くなるという点は,注意しなければならないが,印加電圧を下げられるという利点の方がより大きいと考えられる。 次に,試作した検出器の性能評価を行うためのシステムのセットアップを行った。ガス供給系,信号読み出し回路,データ収集系のそれぞれについて,最適化を行い,カーボンナノチューブの性能評価に適しているかどうかの確認を行っている。最適化するために,飛跡検出器の一つである,増幅率,検出効率,検出時間等の性能の良く分かっている多線式比例計数箱(MWPC)を用いている。 ナノカーボン面の調査では,カーボンナノチューブの自己組織化で,要求する突起形状の形成は困難を伴うことが分かって来たため,自己組織化を用いずに,ナノカーボン面を形成する方法の調査を行っている。有力な方法の一つとして,ナノインプリントと呼ばれる印刷技術を用いたものがある。この方法で,検出器に要求されるナノカーボン面を形成することが可能かどうか調査中である。
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