Research Abstract |
陰極面(ナノカーボン面)に微小突起を形成した放射線検出器を作成し,性能評価を行った。微小突起の形成は,信州大学工学部内長野市ものづくり支援センター(UFO長野)にある(株)ディスコのダイシングソーを用いて行なった。FR4板上に約100μmのカーボンを含んだ樹脂を塗布し,ダイシングソーにより表面を切削することにより,微小突起を形成した。突起の形状は,高さ50μm,一辺の長さ58μmの微小四角錐と,高さ50μm,ピッチ58μmの三角畝の2種類を形成した。立体顕微鏡で頂点部分を観察したところ,断面の曲率が10〜15μmの円状であり,電場計算を行なったところ,印加電圧は,突起がない典型的なResistive Plate Chamber(RPC)の場合(陰極と陽極間の距離が2mmの場合,約8〜9kV)と比べて,約半分(同様の場合,約4kV)でガス増幅が起こることが分かった。 加工した陰極を検出器に組み込んで宇宙線を用いた測定を行なったところ,印加電圧が6kVから信号が観測され始めた。また,RPCと同等の大きさの信号を得るには,RPCの印加電圧より1kV低い電圧の印加が必要であると分かった。これは,ガス増幅が起こる高電場領域が突起の頂点部分のみに局在しているため,ガス増幅は低印加電圧で起こり始めるが,ガス増幅が起こる高電場領域が狭く増幅が限定されていることにより,RPCと同等の増幅率を得るには,印加電圧を上げて高電場領域を拡大する必要があるためと考えられる。更に,高電圧を印加してから時間が経過するにつれ,信号の大きさが小さくなる現象がみられ,安定した信号を得られるまで数時間を要した。これは,印加電圧によるナノカーボン面の基板のFR4の分極や,ガス増幅で生じたイオンが関係していると考えられる。これを検証するため,安定するまでの時間が,陰極板の厚さや,カーボン面の面抵抗にどのように依存するかを調べている。
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