2006 Fiscal Year Annual Research Report
結晶表面上の金属一次元鎖におけるスピンー軌道相互作用とスピン偏極電流
Project/Area Number |
18654053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有賀 哲也 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (70184299)
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Keywords | Rashba効果 / スピン-軌道分裂 / 角度分解光電子分光 |
Research Abstract |
本研究の目的は、単原子スケールの表面構造においてスピン偏極電流を実現することにある。そのために、半導体表面上にTl、Pb、Au等の金属単原子細線を作製し、その擬一次元的な表面電子バンドにおけるスピン-軌道相互作用の様相を明らかにすることを通して、表面電子バンドのスピン-軌道分裂が大きい表面物質を探索する。このような物質においては、平衡の電子状態はスピン偏極していないが、非平衡現象である電流においては、スピン偏極が実現すると予想されるからである。 本研究で対象とする表面物質系はいずれも擬一次元的構造を有するので、電流の方向に応じてスピン量子化軸が一意的に決まる。このような物質はスピン偏極した輸送現象の研究対象として非常に興味深く、新しい研究領域を拓く契機となると考える。また、これによりナノメートル・スケールのスピン・フィルターが実現可能となり、いわゆるスピントロニクスの実現にも重要な意義を有すると考える。 本年度は、(1)Tl/Ge(111)系における(1x1)相と(3x1)相の構造解析、バンド構造の決定、(2)Bi/Ag(001)系における巨大Rashba分裂の観測、(3)Au/Si(001)系のシングルドメインAu単原子鎖の成長条件の決定、を行った。 (2)の結果の一部はすでに論文発表した。また、(1)の結果については第一論文の執筆をほぼ終え近々投稿する予定である。
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