2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18654057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野島 勉 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (80222199)
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Keywords | 超伝導デバイス / 薄膜 / スピン注入 / 従来型超伝導体 / 酸化物高温超伝導体 / マンガン酸化物強磁性体 / FFLO超伝導 |
Research Abstract |
本研究の目的は超伝導体Sの両側にスピンの方向の違う強磁性体F、または強磁性体と常磁性体Nを接合させたF_↑/S/F_↓,F/S/N二重トンネル接合を用い、S層へのスピン注入効果により超伝導を制御し、FFLO状態を引き起こすことである。平成18年度は、高温超伝導体YB_a2Cu_3O_7とマンガン酸化物La_<0.7>Ca_<0.3>MnO_3を用いたF_↑/S/F_↓接合デバイス、NbとLa_<0.7>Ca_<0.3>MnO_3、Agを用いたF/S/N接合デバイスの作製を行い、それらのスピン注入効果を調べた。 dc/rfスパッタ装置を用いた成膜技術および購入備品であるマスクアライナーを用いたフォトリソグラフィー法を駆使することにより、スピン注入可能な200×400m^2の接合面積を持つF_↑/S/F_↓、F/S/N接合デバイスの作製工程を確立した。 F_↑/S/F_↓接合試料では、上下のF層の保持力差を利用して、両F層のスピンが平行と反平行になる状況を作り出し、両者の違いによる超伝導転移温度T_c、超伝導ギャップΔの変化をトンネル伝導度測定により調べた。その結果、反平行の場合において、T_cが減少し、高温領域でΔが小さくなる現象を見出した。これはS層中に注入された非平衡スピン蓄積により超伝導が制御できたことを示す。しかし、FFLO状態の出現をねらいT_cより十分低温でトンネル効果を測定したところΔには顕著な変化は見られなかった。YBa_2Cu_3O_7では超伝導凝縮エネルギーがLa_<0.7>Ca_<0.3>MnO_3の保持力エネルギーに比べ十分大きく、保持力差を用いたスピン制御が困難になるためと解釈した。 F/S/N接合試料では、典型的なNbのトンネル伝導特性を得ることができたが、電流量を増やしても顕著なΔの変化を観測することは出来なかった。実際、ゼーマン効果によるトンネル特性の非対称性を用いて、注入されたスピンの分極率を求めたが、磁化測定で得られた100%近い値に反しほぼ0%であった。F/S界面でのスピン反転散乱が原因と推測される。
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