2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18654058
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80189399)
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Keywords | 量子トンネル / 量子計算 / コヒーレンス / 強磁場 / 超低温 |
Research Abstract |
本研究の目的は最も単純な量子キュービットであるS=1/2の単一スピンを用いて、量子トンネル効果を磁場制御し、電子スピンの量子トンネリングにおける核スピンの役割を明らかにする事にある。本年度はまず、まず電子スピン1/2、核スピン3/2のCu2+イオンをガラスにドープした系において、高速掃引磁場のもとでゼロ磁場における量子トンネルの磁場掃引速度依存性を詳細に調べた。その結果、低速域では熱緩和のために反転率が完全な量子トンネルで期待される1以下であるが、速度を速くすると一旦反転率がほぼ1になった後で20%程度減少することを見いだした。また、スピン間の双極子相互作用の影響を抑制するために、スピンを数%に希釈して濃度とトンネルギャップの大きさの関係を調べたところ、2%以下ではギャップがほぼ一定の値になることがわかった。この事より、ガラスにドープしたCuイオンは、双極子相互作用も含めたスピン間相互作用が反転幅に影響を与えない領域が実現可能であることがわかった。この事はコヒーレンス制御の第一関門として重要な成果である。次に、奇数スピン系ではパリティにより禁止されているゼロ磁場量子トンネルが観測されることから、核スピンの本質的な役割が明らかになった。これらの成果の一部は、ICM2006の招待講演として報告された。 次に、核スピンを持たないS=1/2のスピン系を調整し、第一の候補として、Cr^<5+>スピンにおける量子トンネルを調べたところ、ゼロ磁場におけるスピン反転が強く抑制される事がわかった。この事は、ゼロ磁場量子トンネルの起源が同じ原子内にある核スピンとの超微細結合である証拠となる。研究の第2段階として、核スピンの偏極を制御した場合、ゼロ磁場のスピン反転が影響を受けるかどうかの研究をすすめるために、定常磁場とパルス磁場を組み合わせた測定系の開発を行った。
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