2006 Fiscal Year Annual Research Report
円盤及び円筒内に閉じ込められた渦糸系の示す新規物理現象
Project/Area Number |
18654061
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大熊 哲 東京工業大学, 極低温物性研究センター, 助教授 (50194105)
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Keywords | 第2種超伝導体 / 渦糸状態 / ゆらぎ / ノイズ / 渦糸ダイナミクス / まさつ / アモルファス膜 / ピーク効果 |
Research Abstract |
コルビノディスク(CD)や円筒という特異な幾何学配置に閉じ込められた超伝導渦糸系の示す,駆動力増大に伴う動的状態変化と,これらの系を舞台にした新しい相転移・ゆらぎ現象の探索と解明を目的として研究を進めた。 (1)これまでにCD形状の厚いアモルファス(a-)Mo_xSi_<1-x>超伝導膜を用いて,半径方向に歪み力をかけて回転運動させた渦糸グラス系のダイナミクスを調べてきたが,(従来の予想に反し)駆動力の増大と共に,剛体回転を経ず,プラスチックフローから液体的フロー回転への状態変化を示す電圧及び電圧ノイズの上昇を観測した。本研究では,a-Mo_xSi_<1-x>膜よりピン止めが弱く,モードロック共鳴により渦糸格子を確認したa-Mo_xGe_<1-x>膜のCD試料を用い,同一半径上の2つの電圧端子(内側:V_<12>,外側:V_<23>)により渦糸格子系のダイナミクスの空間依存性を調べた。その結果,やはり剛体回転は観測されず,内側から外側に向かってプラスチックフローが広がっていくことがわかった。V_<12>/V_<23>の磁場依存性を調べると、低電流においては,静的なピン止め力を反映した臨界電流のピーク磁場付近においてV_<12>/V_<23>がピークをもつのに対し,高電流においては,より高磁場側でV_<12>/V_<23>がピークをもった。これは‘動的ピーク効果'とも呼べる現象である。この結果は,低速で回転運動している渦糸は静的なピン止め力を感じ,高速で回転運動している渦糸は動的なピン止め力(動摩擦力)を感じていることを反映したものである。 (2)つぎに、CDのマイスナー相において見出した,一定電流下での自発的電圧振動のメカニズムを解明するため,回転運動する渦糸-反渦糸系の速度(電圧)の空間(半径)依存性を調べた。その結果、渦糸運動による電圧パルスの立ち上がりは内側がわずかに早いことがわかった。また、渦糸系に「一様な力」がかかる円筒状試料では、明確な振動波形が見られないことがわかった。これらの事実は、「閉じ込め」だけでなく「歪み力」が、この振動現象に重要な役割を果たしていることを示している。
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Research Products
(3 results)