2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18654062
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
芝内 孝禎 京都大学, 理学研究科, 助教授 (00251356)
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Keywords | 強相関電子系 / 希土類化合物 / 積層構造 / 超格子 / 反強磁性 / 異方的超伝導 / 擬ギャップ / 二次元性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、分子線エピタキシー法(MBE)による重い電子系Ce化合物の薄膜化技術を完成させ、用いた同じ結晶構造を持ちながら重い電子を持たない通常金属であるLa系化合物との積層構造を作製し、重い電子を擬2次元的に閉じ込めた系を人工的に作り出すこと、およびこのような系での物性測定により、低次元強相関電子系の理解へとつなげていくことである。 今年度の成果としては、まず、薄膜成長装置であるMBEシステムの改良をおこない、1桁以上の高真空化、La原子用セルの導入、各種コントロールのコンピューターによる一括化を完成させた。この改良により、希土類元素の蒸着中の酸化が抑えられ、また薄膜成長の再現性が格段に向上した。このシステムを用い、CeCoIn5超伝導体のc軸配向薄膜の作製に成功し、2Kにおいて超伝導転移を確認した。これはこの系の超伝導薄膜が得られた初めての例である。抵抗率の温度依存性はバルク単結晶のものとほぼ一致している。 次に、2元系であるCeIn3薄膜の成長を行い、反射電子線高速回折(RHEED)にストリークがみられるエピタキシャル成長に成功した。表面の平坦性は単位格子5つ程度の凹凸に抑えられ、ほぼ原子レベルの平坦性が得られており、積層構造の実現への条件をクリアしていると考えられる。格子のマッチングの良いMgF2(001)基板上に成長した薄膜について、X線回折による逆格子マッピング測定を行い、CeIn3薄膜が基板面方向にも良く配向した単結晶状の薄膜であることを確認した。電気抵抗率測定の結果はバルク単結晶の結果をほぼ再現し、10Kに反強磁性転移を確認した。 また、並行してCeMIn5系(M=Co,Rh)のバルク単結晶について圧力下での輸送現象測定を行い、高温超伝導体に見られた非フェルミ液体的振る舞いを再現していることを明らかにし、強相関電子系に共通の起源の可能性を議論した。
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