2006 Fiscal Year Annual Research Report
メゾスコピック系とトンネル素子を用いたスピングラス研究手法
Project/Area Number |
18654067
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 徹哉 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20162448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧 英之 慶應義塾大学, 理工学部, 助手 (10339715)
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Keywords | スピングラス / エイジング / 微細加工 / トンネル磁気抵抗 / 無磁場中測定 / ドロップレット |
Research Abstract |
スローダイナミックスを示すランダム系は長年にわたる統計物理の非常に興味深い対象であり、特にスピングラスを中心とするランダム磁性体の研究は、その中心をなしている。しかし、その基礎をなすスピングラスでは、未だに低温相の理解が不十分である。スピングラスの低温相ではエイジングやカオス・メモリー効果等の特徴的な現象が観測され、その起源は二つの描像により主に説明され、そのモデルの妥当性については未だに明らかではない。これらの描像は磁場印加時にスピングラス秩序が安定か否かという点で顕著に異なる。この点を明らかにするために、有限時間内にスピングラスの平衡状態が実現できるように、3次元的に空間が制限された微小サイズの系を用意し、相転移を明確に議論出来る環境を作り、さらに、磁場の印加なしでスピングラスを研究するために、スピングラスと絶縁体からなる3層構造を作成し、トンネル抵抗を利用したスピングラス相関の測定法の確立を目指した。 電子線リソグラフを用いてSiO_2の微細な柱状構造を多数作成し、その上にスピングラスAgMnをイオンビームスパッタにより堆積させることで、200nm程度のブロックを多数作成した。この試料の磁化を調べた結果、スピングラスブロックと同組成で膜厚が等しいAgMn薄膜と比較して、転移温度が低下した。この結果を用いて評価した相関長の成長に関する指数は、過去に他の手法で求められている値と良く一致し、スピングラス挙動に対するドロップレット描像を支持する結果を得た。 次に、スピングラスのトンネル抵抗測定のための素子を作成した。電極にAgMnを用い、イオンビームスパッタにより正確に制御された数nmのAl2O3絶縁層を中間に堆積させた。この試料のコンダクタンスではスピングラス転移温度付近より低温で上昇する場合があった。このコンダクタンスの上昇はスピングラス転移を反映するものと考えられ、無磁場中でトンネル抵抗よりスピングラス転移を観測できる可能性が見出された。
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Research Products
(4 results)